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五月晴れの放課後。
中間テスト1週間前でクラスメイトがざわつきながら掃除する中を、特大の紙袋を2つ手に提げて大沢大和は歩いていく。
彼の目的地「家庭科被服室」には数人の女子が集りとても華やかな雰囲気だ。
「やまと、遅いぞ~」中心であれこれ指図していた少女が彼に気がつき近寄ってくる。
「千秋先輩ひどいですよ、2年生は遠いんですからね」
文句をいいつつも大和は手早く持ってきた荷物を出していく。
「やまちゃんは何持ってきたのよ」残りの女子がいっせいにやってきて彼を取り囲む。
「みどり先輩が好きなハーブティーも持ってきたんですよ。やっぱりそれなりの道具で淹れたいですし」
大和はメガネをかけたショートボブの女子『みどり先輩』に言うと、ちょうど入ってきた同級生の方向かうへ。
「おおさわ~、花入れるのこれしかなかったんだよね」
「いいんじゃない、ちょっと貸してみ」
さくさくとグラスに入る長さに茎を切っていく。
「後は任せた。千秋せんぱーいそっち手伝いますよ」
「そうね、そろそろ1年生が来る頃だから廊下の方お願い」
だいたいの準備を終えた頃、廊下の方がざわめいてきた。
1年生の中で唯一の男子有野大地の声が聞こえ、大和が廊下に出ると
「やまと先輩、今日はご馳走が食べられるんですよね」
期待に満ちた後輩の目とくれくれと出してくる手を、大和はがしっとにぎり
「お茶会だぞ!僕も気合を入れてクッキーを焼いてきたんだ。どこがすごいかというと」
「ああ、長くなりそうなのでいいっす、やまと先輩のうんちく長いってちあき先輩から教えてもらったので」
千秋のモノマネもしながら大地が言うと
「ぬぬぬぬ」いいところで言葉を遮られた大和は唸っていたが
「まあいいか。席は自由だから好きな飲み物取ってから座るんだぞ」
「おっす、おかん大和先輩」
おどけて大地が言いながら教室に入っていく。
「えー、どうゆう意味なんだ大地」
慌てた様子で大和が後輩を追いかけていく姿を見ている女子が1人。
綺麗に切りそろえられた肩までの髪の少女の名は東雲桜
手には黄色のガーベラの花束を持っている。
話しかける機会を逸してしまった彼女は、渡そうと伸ばしていた手を下し教室に入っていく。
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