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「ここいいかしら」
公子はお伺いをたてたが、すでに座っている。
京香と涼子は唖然と公子を見つめていた。
「ええっ!びっくりした」
涼子の隣に公子がいきなり座ってきたからだ。
「あはは、私もびっくり」
「何で公子さんが、驚くの?」
京香が不思議がる。
「いやいやいや、ガチで無いし」
涼子は後輩だが、ついタメ口を聞いてしまうぐらい引いている。
「ほんと、私もガチでないわー」
公子も涼子に同意した。
「あのぉー公子さんが座ってこられたんですよねぇ」
京香が言いずらそうだが、指摘した。
「いやいやいや、だって、ほんとガチでないわ」
公子がまたふてくされている。
京香と涼子は意味がわからないと顔を合わせて首をひねっていた。
「何で!イワシの塩焼きがメインなの」
公子が頼んだ、2月限定節分お豆ちゃんランチのことのようだ。
「イワシ……のことですか」
京香が公子はお豆ちゃんランチのことを言ってたんだと気づいた。
涼子は突っ込みたいが我慢しているようだ。眉間にシワがよっている。
「恵方巻き丸かじりハーフタイプでしょ、何だかわかんない小皿おかずが3つ。お味噌汁、で、メインがイワシの塩焼き。このランチガチじゃない」
「節分ですからねぇ。もう過ぎてますから節分月ですからねぇ」
涼子は無視してるので、京香が相手をしている。
「これ、これってデザートの分類だったの。デザートがこれなの?」
公子は豆が入ってるプリンカップのような容器を持って京香に見せた。
「節分ですからねぇ、もう過ぎてますけど、節分月ですからねぇ」
「あのね、節分限定メニューは、可愛かったのよ。鬼の顔のチキンライスにキーマカレーがクルクルの髪の毛の代わり、デザートはきな粉プディングすごく豆の味がして美味しかったのよ。それから……」
「あーーー、公子さん知らなかったんですか。社長がこんなの節分じゃないだろって怒って、新たな節分ランチが誕生したんですよ。今月中やるらしいですよぉ」
してやったり顔の涼子。
「知ってたわよ。フン。ここまでガチだとは思わなかったという意味よ」
公子は知らなかったが情報に関して誰にも負けたくない。
涼子に負け惜しみのような意地を張っていた。
「公子さん豆の数足りないでしょ。それじゃぁ」
公子の話が長くなりそうなので、涼子はわざと嫌味を言って、節分ランチ苦情の話を遮ろうとした。
「いやダァ、涼子ちゃん。余裕よ。これ余るわよ。半分で十分よ。失礼ね」
豆のカップを涼子に見せながら公子は豆を1つ口に入れた。
「半分は……ちょっと、どうかと」
京香は小声で呟いた。
「あのー私たちに話があるんですよね。何ですか?」
涼子は情報通公子が自分たちのテーブルに来たのは何かあるからだ。
早くその話が聞きたいから直球で聞いてみた。
「……。」
「公子さんっ、無視しないでくださいっ」
公子は涼子に背を向けていた。
「もう、怒らないでくださいよ、豆の数は冗談ですっ。すみませんでした」
涼子は頭を下げた。
「ねぇ、涼子ちゃん、違うわよ。あれよ」
「えっ?」
「今年は北北西でしょ。だから」
公子は涼子に背をむけて、恵方巻きハーフタイプにかぶりついていた。
「マジメか、マジで、ちゃんとやってる。イヤ、節分過ぎてるし」
公子が 恵方巻きハーフタイプにかぶりついて食べてる間、3人のテーブルは静かな時間が戻ってきた。
それは嵐の前の静けさだった。
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