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見上げたくなるほど美しい吹き抜けに、ステンドガラス窓から差し込む太陽光が眩しく、ジャングルの様に背が高い観葉植物の間から見える池と滝が設えた演出。むせる程にマイナスイオンが漂う正面玄関。
さながら高級ホテルの様だが、似つかわしくない団体が自動ドアに立っていた。
ヨレヨレのスーツ。無精髭、後ろがクシャっと跳ねた髪型。だらしなさ全開だが、やたらと目つきだけ鋭い50代のおじさん。と、その他2名の若手。作業服2名。計5名が美咲の受付にきた。
にこやかにプロ対応の美咲。丁寧にお辞儀をしている途中なのに、おじさんが
「京都府警 八代慎司です」
警察手帳をまだお辞儀中の美咲へかざした。美咲はバネでピンッと跳ね上がるように顔を上げた。
「受付に今里 公子さんいらっしゃいますよね」
「ええっ、公子さんが、見つかったんでか。どうしたんですか、何かあったんですか」
興奮して思わず大声で叫んだのは、隣りの
涼子だった。
「はい。2月から欠勤しておりますが」
美咲は冷静に表情1つ変えずに答えた。
「責任者の方を呼んでいただけますか」
「かしこまりました」
美咲は内線で室長を呼んだ。受話器を持つ手も震えてない。八代警部は美咲をジッと観察するように見つめていた。
涼子や他の受付メンバーは口々におどろきの声をあげていた。
鈴木由紀子室長と前島智部長が、大理石の床を転がるように受付にやって来た。
前島部長先頭に八代警部一行はウラ事務所へ消えて行った。
「美咲さん、公子さん、もしかして」
涼子は気になって仕方がないとばかりに
ずっと事務所の方を振り返っている。
「お客様よっ」
平静な美咲を涼子は尊敬の眼差しで見つめた。でも、冷静すぎない?警察来るのわかってたみたい。
「えっ」
「なに?」
「いえいえいえ」
「涼子ちゃん、しっかりしてね」
「はい」
まさかね。まさか。涼子の心に一滴の疑惑が落とされたようだった。
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