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「2月17日金曜日でした。公子さんが突然
希美ちゃんと清水さんの事故のことで、新しい情報があると言ってこられたんです」
先が読めない意外な展開の告白に、鈴木室長、前島部長、オモテウラ受付メンバーは、声も出ないほど驚き、釘付けになっていた。
2人を除いては。
そのうちの1人
「ああーバカバカバカ、ホントに、何やってんだよ」
涼子はあの時、京香さんが深く悩み続けていたことを気づけなかった。自分を責めて髪の毛をかきむしっていた。
「シッ」
前島部長は一言で涼子を黙らせた。
「私は、目撃証言に自信がありませんでした。ハッキリ希美ちゃんだと言い切れない。
顔を見ていなかったからです。清水さんであることは、カバンが一致した点で間違いないようでした。私は白っぽいコートを着ている女性だと。その日希美ちゃんは白のコートだった。その一点で希美ちゃんだと警察に証言しました」
「そうですよ。田口さん。何も問題ないですよ。だって神崎さん本人が自分だと言ってるんですから」
警察の事情聴取を受ける京香をフォローした鈴木室長が、京香の証言を肯定してあげた。
京香は泣き出しそうな顔で、鈴木室長へ頭を下げた。顔を上げた京香の瞳は真っ赤そまっていた。テーブルにのせた手は硬く握り締められていた。
「神崎希美……」
八代警部はモニターの京香を見ながら呟いた。
「黒川警部班でしたね。結局不起訴になりましたけど。何か新しい情報があるんでしょうか」
若手の長嶋泰輝刑事。語尾が強めになっているのは、京香の告白に感化され気が高まってるようだ。
「泣き出しそうですね。なんで、こんな優しい感じの人が犯人なんだろ」
「おいっ、まだ、ホシと決まったわけじゃないぞ。言葉に気を付けろっ」
八代警部はモニターから目を離さずに長嶋刑事を叱責した。
「すいません」
と言いながら、八代警部は田口京香が犯人じゃないと思ってるのか?何かに気づいたんだろうか。
「……この表情は」
八代警部は、京香が鈴木室長に頭を下げて顔を上げた瞬間だった。
「でも、違うな」
「なんですか」
「イヤ、なんでもない」
長嶋刑事は、モニターにアップになっている田口京香をさっきより前のめりに見つめた。
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