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京香は床に吸い込まれて消えてしまうのではないかと思うほど、うつむいて顔があげられない状態になっていた。
「京香さん……」
涼子が立ち上がって駆け寄ろうとした時
「うふふふっあははは」
「美咲さんっ、何笑ってんですか。ひどいです」
「だって、京香ちゃん顔浮いてるよ。壁に同化してる。テレビで合成する人みたいだわ。あははは」
京香が立ってる後ろの壁は黒だった。京香は黒のタートルセーター、黒のパンツ姿。確かに顔だけ浮いて見える。
「美咲さんっ不謹慎です、そんな、よくそんなこと」
涼子は怒りで顔を真っ赤にしていた。
「ひどいよね」
「今そんなこと言わなくてもね」
後ろの席からも批難の声がしてきた。
美咲はそんな声には関心ないとばかりに、長い足を組んで、京香を見据えた。
「美咲さん、ひどいです。そんなこと言うなんて。ホントっヒドイ」
京香は少し微笑みを見せながら怒ってみせた。
「怒り方、ヘタクソ」
美咲は小さなため息をついた。
「公子さんからの新情報は、キスをしていたのは希美さんじゃないとの事でした。その人物は黄色のコートを着ていた。だから、暗闇で雪が降る中、車から一瞬見ただけの私が、黄色を白と見間違えたんだと言われました」
京香は美咲がいじってくれて、吹っ切れたのか、ギアを入れ直したようにしっかり話し出した。
「ええー誰?希美ちゃんじゃなかったの」
また、会議室がざわつき出したが、
京香は話を続けた。
「公子さんは、そうやって笑ってられるのも今のうちよ。と席を立ちました。私はヤリメイでの事が気になって、真実が知りたくて
マンションへ行きました」
京香はそこで深呼吸をした。
「話がこじれて、私は、、、頭を殴って……
殺しました」
「嘘っ」
涼子が悲鳴のような声を上げた。
「だって、無理、無理、絶対無理。京香さんどうやって、マンションから深泥池まで運んだんですか」
京香は立ち尽くしてぼんやりしている。
「ねぇ、京香さん」
涼子が駆け寄って京香を抱きしめた。
「ねぇ、涼子ちゃん」
涼子は抱きしめた手を緩めて京香と向かい合った。
「深泥池ってなんの事?」
「えっ」
別室モニター前で長嶋刑事が
「変です。殴打ってことですか」
死因は絞殺と鑑識結果が出ていた。犯人逮捕時の秘密の暴露にあたるので、報道では死因は伏せられていた。
「深泥池のことも知らないのかっ」
「えっこれは、やはり、共犯者がいますね」
八代警部は焦る長嶋刑事を無視して、じっとモニターを冷静に見つめ続けていた。
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