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「神崎希美を殺したぁー」
別室モニター前で長嶋刑事が雄叫びをあげて思わず立ち上がった。横に座っている八代警部はモニターから目を離さず
「冷静になれ」
「はい、でも、いや、こんな事初めてで」
長嶋刑事は座り直しても、手で腿を叩いたり足元もジタバタして、落ち着かない様子。
「俺もだ」
八代警部は長嶋刑事の肩をポンと軽く叩いた。ただ、それだけの事で長嶋刑事の心は平静を取り戻していった。
モニターからの声が大きく会議室がサッカースタジアムのようだ。
「黒川に電話してくる。頼むぞ」
「はいっ」
長嶋刑事はモニターから目を離さず力強く返事した。
ドアノブを掴む八代警部の顔は、口元と頬が少しだけ緩んでいた。きっと長嶋刑事が見た事ない八代警部の顔だった。
「黒川が調べてくれる、どうだ、まだ騒がしいな」
電話を終えた八代警部が別室へ戻ってきた。
「はい、具体的な自供はまだ。動揺が鎮まらないようで」
「前島部長だな」
「はい、さっきから、この人の声が大き過ぎて、あと、この女性も」
八代警部は椅子に引っ掛けていた、くたびれた背広を手にとった。
「行くぞ」
「はいっ。モニターはこのまま起動しておくよう、連絡します」
長嶋刑事は別室に極秘案内してくれた責任者へ電話していた。その姿から気負いや焦りは消えていた。
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