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「間違えましたね」
「へっ?」
前島部長は意味が全くわからないのか、
鳩が豆鉄砲的な空気が抜けた返事をした。
「今里公子さんと神崎希美さんのロッカーです。間違えましたね」
「そんなっ、そんな、ええっ、鈴木くん、鈴木くんええーと、確か、今里くんのロッカー
13番だったよね」
鈴木由紀子室長は手に持っているファイルを確認しながら、
「今里さんは18番です。神崎さんは13番です
部長は確認して鍵を持ってかれましたが…」
前島部長は鈴木室長のファイルを受けとってみたが、目を細めて、腕を伸ばし、顔を離してファイルを見てる。
「老眼?」
涼子が前島部長の横に来てファイルを覗き込んでいる。
「うるさいっ。あっ慌ててたから。メガネがちがって、ええええーあーーなるほどね。うんうん、そういうことか」
静かに鈴木室長にファイルを返してから
「申し訳ございませんでした」
前島部長と涼子も一緒に頭を下げた。
「誰にでも間違いはあります。そうですよね」
八代警部は鈴木室長に声をかけた。
「はい、そうですね。あの時は驚いて慌ててましたから」
「鈴木さんは落ち着いてましたよ。流石だなと思ってました」
「いいぇ、そんなことありません」
鈴木室長は恐縮ですというようにうつむいた。
八代警部の携帯が鳴った。
「うん、うん、うん、そうか、分かった。
ありがとう。こっちは任せろ。頼んだぞ」
会議室にいる全員が電話の内容が気になっていた。スピーカーにしてくれよって全員思ってた。
「深泥池のご遺体は神崎さんと判明しました」
静まり返った会議室。
八代警部の声にいい感じのエコーがかかって響いていた。
それが、余計にもの悲しさを演出していた。
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