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三回目の交際の申し込みをしようと呼び出した時、本題を切り出すまでもなく、彼女は泣き崩れた。
「ごめんね……。ずっと優柔不断で」
映画を観にいった帰り道だった。なんの前触れもなく彼女は涙を見せ始めた。
「ちょっと休もうか」
近くにベンチがあったのが幸いだった。人通りの視線から遮るように、彼女の視線をハンカチでそっと隠した。
「本当に好きなんだね……私のことが。なのに、私ずっと悩んでばっかで、これじゃずっと君が可哀想だよね」
「ごめんな。何か気に触ることでも言ったか」
「ううん。大丈夫」
震える彼女の肩にゆっくりと腕を回した。
「ねえ、もう決めたから」
「決めた?」
「私と付き合ってください」
「……ありがとう。もう君のこと悩ませるのは最初で最後にするから」
まさか相手から言われるなんて想定外だった。
”お前の考えるストーリーなんて裏切られて当然だ。”
あいつの笑い声が頭を過る。
難解なパズルに挑戦したものの上手くいかず、自棄を起こして適当にピースをはめたつもりが完成させてしまったかのような、達成感よりも不思議さが勝ってしまう状況に陥った。
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