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彼氏を演じ始めて3カ月が経とうとしていた。
つまりは、結愛との契約満了期間が差し迫ってきた頃合いだった。
車を運転しながら、こんな風に彼女といる時間ももう終わってしまうのかと、感慨深くもどこかで安堵を感じていた。
夜の国道をのんびりと走る車はなだらかな道で小刻みに揺れ、助手席の結愛を寝かしつけるゆりかごのようだった。時折彼女の寝顔を横目で確認しながら、俺はほとんど義務的にハンドルを握る。今もこうやってちゃんと彼氏を演じれている、その自覚だけが俺を安心させていた。
フロントガラス越しに淡く反射する自分と目が合い、頬の緩みを確認すると即座に正す。まだ安心は早い。
これからが正念場だった。
彼女と別れるという、これが仕事の恋愛である以上避けられない”終わり”という重要な局面が待っている。
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