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「えっ」
彼女の意外な告白に頭が真っ白になった。すると、こちらの表情を窺うかのように彼女は前に向けていた視線を俺に戻す。
「だから、恋愛対象が女性なの、私」
「……じゃあ、なんで俺と」
「必死だったからさ。私がいないと駄目みたいなこといつも言ってきてくれてさ。そんなあなたが放っておけけなくてしょうがなかった。でも、やっぱりいつまでも自分に嘘ついて無理するわけにもいかないじゃん」
彼女が徐に言葉を零すとともに、俺に合わせていた視線が段々と下がり、言い終えたころにはばつの悪そうに俯く彼女の横顔が苦しげに笑っていた。
俺は反射的に彼女の手を握る。
「でもさ。結愛言ったじゃん」
「なに?」
「偽物のミルクでも、綺麗に混ざり合うんだろ」
そっと重ねるようにキスをした。彼女が壊れてしまわないように。
握る手のひらが微かに震える。これはきっと夜のせいじゃないな。
「ばか」
唇を離すと、彼女は笑う。純粋無垢な笑顔で。
その笑顔が二人の関係のすべての答えだった。
お互いを騙す最後の夜に、俺らは綺麗に混ざり合った。やっぱり俺は偽物の彼氏だ。本当の君にずっと気づけなかったなんて。
君は彼女を演じていた。
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