1話~花火大会~

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1話~花火大会~

7月の夕方。 今日は、河川敷で花火大会がある。この、地域の花火大会は結構大規模な花火大会らしく、毎年たくさんの人が訪れる。  「恋歌。これ、可愛くなーい?」 母さんが、白色に小さなピンクの花が散らばっている浴衣を持って廊下から歩いてきた。 「どこで買ったの?」  綺麗だったので私はどこかで買ったのだろうと思った。 「あら、買ってないわよ。母さんのおさがり」 「え!?母さんのなの」 「ええ。そうよ」 常にがさつな母さんがこんなに綺麗な浴衣を持っていようとは思いもしなかった。母さんのことだからジュースの染みが一つぐらいあってもおかしくないのに。 「ほらほら、こっち着て。着さしてあげるか   ら!」 鏡の前にたつと手際よく、母さんは浴衣を着さしてくれた。 「髪はこのまんまがいい?うーん。あっ!こうし ましょ」 母さんのアイディアに任して髪を結ってもらうと、少しほぐされた大人っぽいお団子ヘアになった。 「よし!これでオッケー。玄関に下駄があるか  らね」 母さんが言い終わった時、玄関から「恋歌ー」と私を呼ぶ声がした。 「あっ。ヒロくんじゃない?」 母さんが、ヒロの名前を呼んだ。ヒロとは私の幼馴染みで、サッカー部に所属している。フワッとした茶髪よりの髪に、切れ長の目のをしている。 中学1年生からたくさん告白されていて結構モテている。 「じゃあ、お土産よろしくね」 「うん」 母さんは仕事の都合で花火大会には行けれないため、今年は私がお土産を買って帰ることになった。 「行ってきまーす」 玄関に置いてあった下駄を履き、家を出た。 「お待たせ」 「遅い!32秒も待たせやがって」 「たったの32秒じゃん!」 「ははっ。そんじゃ行くか」 「うん!」 保育園の頃から家族ぐるみで仲が良かったから、こうやって2人で花火大会とかに行くのは当たり前の事… だけど、私の胸は今張り裂けそうな程ドキドキしてる。 なんでかって?私は…ヒロのことが好きだから。 初めてその気持ちに気づいたのは中学3年生のとき。最後の体育祭で、運動が好きな私は、本気を出したけど勝てなくて本気で泣いてた。そしたら、ヒロが、 「お前、スゲー頑張ってたじゃん。かっこ良かっ たぜ」 っめ笑って励ましてくれた。その時からヒロが好きなんだって気付いた。 家から20分ほど歩いて、花火大会の会場についた。話し合って綿菓子屋に行こうということになった。 どうやら綿菓子屋は最近話題のお店から来たらしくカラフルで可愛いと有名らしい。 そのため、たくさんの人が並んでおり五分ほど待った。 「いらっしゃいませー。ご注文はどうなされます か?」 可愛らしい店員さんが聞いてきた。 「じゃあ、私はこのカラフルなやつで」 「はい。そちらのお客様はどうなされますか?」 「うーん。じゃあ、普通のでいいっす」 「はい。それでは、合計で800円になります」 ヒロが300円、私が500円を出して綿菓子を買った。 「じゃあ、あそこ行くか」 ヒロが川の方を指差した。 「うん。あそこなら花火も見やすいし、いいか  も。」 川のそばから見る花火はとても大きく綺麗で知っている人もあまりいないから、静かに見れる。 川について腰を下ろした。 「綿菓子、美味しいね」 私が言うと、ヒロも1口かじり 「ほんとだ。うまいな」 と呟いた。あまりにも美味しかったのでばくばく食べてしまい、あっという間に終わってしまった。ヒロはゆっくり食べていてまだ終わってない。暇だったので 「ヒロ、何か買ってこようか」 と聞くと、「俺も行くわ」と立ち上がった。 「えっ?いてもいいのに」 と、言いながらもついてきて欲しいという私がいる。 「いーの。焼き鳥とか買いたいし」 「ふーん」 「手ェ貸して」 そう言って手を差し出すヒロ。その手は、浮き出た血管。男なんだと実感させられる。 手を差し出すとヒロは、私の手をつかみ立ち上がった。 「ーっ」 ヒロが触れた場所が熱くなる。心臓がバクバクする。顔が赤くなってきているのが自分でもわかる。 「どうした?」 しばらく黙っていたので、ヒロが私の顔を覗きこむ。 「なっ、なんでもない。ほら!とうもろこし!  とうもろこし食べよ!!」 顔が赤くなったのがバレないか心配で、後ろを向いてごまかした。あ、危ないー。 「ふーん。なら行くか」 「うん」 スタスタと歩き出すヒロ。遅れないように、私も歩き出した。しばらく歩いていると、ある聞き覚えのある声が聞こえた。 「ヒロくぅーん♡」 後ろにハートが付く喋り方。この声は… 「ヒロくん!!偶然だねぇ。お祭り来てたん   だ!」 この女の子は、柊愛(ひいらぎあい) ピンクの浴衣にプルプルの唇。髪はツインテールでユルく巻いている。クラスの女子の中でもリーダー核を誇っている。 「おおー!!柊か。偶然だな」 愛ちゃんは、得意の上目遣いでヒロを見上げている。 「うん!今からどこ行くの?」 「とうもろこし買いにいくんだ」 「えーぇ!偶然、愛もぉ~とうもろこし買いにい くんだ~。一緒に行かない?」 「うーん。どうする?恋歌」 ヒロは私の方を向き問いかけてきた。 「えっ!?私?私は別にいいよ」 「そっか。じゃあ、いくか」 ヒロはまた、歩き出しとうもろこしを買いにいった。 「ねぇ」 愛ちゃんは私の方を振り替えって言った。 「あなた、何て言ったっけ?名前は」 その目はさっきヒロと話していたのとは真逆で冷たく鋭い。 「え、えーと、恋歌です。一ノ瀬恋歌」 「あら、そうなの。同じクラスだっけ?」 「は、はい。」 「ふーん。まっ、どうでもいいや。ヒロくんに  手を出さなかったら。ヒロくんは私のもの」 え… 「あんたみたいな女子力がないブス、きっとヒロ くんも迷惑してるよ?」 そういうと愛ちゃんはクルッと向きを変えてヒロの方へと走っていった。 なんだろ。こういうの嫌だな…私は愛ちゃんとヒロくんのいる方へと歩いた。 とうもろこしを売っている屋台につくと、愛ちゃんはヒロにベタベタでメニューを選んでいた。どうしたんだろう… 「ヒロくんどうする?」 相変わらず愛ちゃんは上目遣いでヒロを見つめている。だが、ヒロはなぜかキョロキョロしている。 「兄ちゃん!あんたら、カップルかい!」 頭に白色のタオルをまいたおじさんがにっこりと笑ってヒロたちに話しかけている。 「いや、俺たちは…」 「もー!!おじさんったら~。違いますよぉー」 愛ちゃんはヒロの言葉をさえぎり、フフッと笑った。 「あっ!?そうかいそうかい!すまんねー」 おじさんは、間違えたのが恥ずかしかったのか、苦笑いをしていた。 私はというと、さっきの愛ちゃんの言葉が頭から離れなかった。 「あんたみたいな女子力がないブス、きっとヒロ くんも迷惑してるよ?」 そうなのかな?だとしたら、ヒロに申し訳ない。 そんな気持ちでいっぱいになった。 私は、その場に立ち尽くしていた。 しばらくして、後ろから肩を叩かれて我に戻った。 「キャ!?なに?」 急に叩かれたのでビックリして叫んでしまった。 後ろを振り替えると口を開けたまま立っているヒロがいた。 「どうしたんだよ。ほら、全然こないからビッ  クリしたじゃん」 「ご、ごめん。愛ちゃんは?」 私が聞くと、ヒロは笑ってくれた。さっきの言葉なんて気にしない!! 「あー、トイレ。大丈夫?」 「うん。大丈夫、ごめんね」 私はヒロを心配させないように笑顔を作った。 「ほら、とうもろこし。買っといた」 右手に自分と愛ちゃんのとうもろこしを持っていて左手で私にとうもろこしを差し出してくれた。 「え?いいの?ありがと」 とうもろこしを受け取って、右手にもつとヒロは「いくか」と歩きだした。 愛ちゃんがトイレから出てくると、母さんのお土産を買い、私達は河川敷きに座った。 「もうすぐか~、どんな花火だろ?」 愛ちゃんは、私とヒロの間に座って私をヒロに近づけまいとしているようだった。 「今年の花火は、色んな模様があるらしいよ」 ヒロは、星の光る夜空を見上げて言った。 「花火が打ち上がります!カウントダウンをお願いします!10!9!」 祭り会場の本部のテントから流れる女性の声がカウントダウンを始め、あちらこちらから8、7… とカウントダウンを始める声が聞こえる。 「「6、5、4、3、2、1…」」 0秒になった瞬間ヒュ~っと黄色の光が空に打ち上がりいくつもの花火が打ち上がった。 1分ほどたったとき、打ち上がるのが終わり辺りはざわざわとし始めた。 「どうしたんだろう」 ヒロは眉をひそめ夜空を見直す。 その時、またヒュ~っとあがって歪な形の花火が打ち上がった。なんだろ?模様かな… 「5?」 愛ちゃんは首をかしげ、ヒロの方を向いた。 ヒュ~ だえん形の花火が打ち上がった。 0? そっか!この花火大会、今年でちょうど50週年なんだ! 意味がわかりなんだか嬉しくなって笑ってしまった。 花火大会が終わり、愛ちゃんと別れ帰り道を歩いていた。 「花火、綺麗だったな」 「うん。50って上がってたよね。」 「あれ、凄かったよな」 「うんうん!また、来年も行きたいな」 「そうだね」 そんな何気ない会話をしていると私の家の前に着いてしまった。 「もうか、じゃあな」 「うん。バイバイ」 手を降り、ヒロの背中を見送ったあと私は家に戻った。 廊下の一番奥に光る母さんの部屋の戸をノックすると、「はーい」と疲れきった声がした。 「母さん、焼き鳥とか買ってきたよ。レンジで温めるから、後でもってくる」 そう言って、キッチンのレンジで唐揚げと焼き鳥を温めると私は母さんの部屋の前へ行き母さんを呼んだ。 「ありがとー!あっ、ビール持ってきてくれ   る?」 部屋から出てきた母さんはヘアバンドで、髪をまとめており疲れきっていた。 「分かった。大きいやつでいいよね」 「うん。銀色ので」 もう一度キッチンへ行きキンキンに冷えたビールを母さんの部屋へ持っていくと私は、風呂にはいることにした。 風呂から出て部屋着兼パジャマに着替えると、私は自分の部屋へ行った。 ベッドに寝転がり、スマホで動画を見ているとお菓子の作り方のレシピが動画で流れているのが見えた。何気なくタップして見ていると中々簡単に作れるらしく、次の週末作ってみることにした。 「そろそろ、眠いな」 そう呟いてみた。デジタル時計は11時30分を表示している。私は青いタオルケットをかぶって寝た。
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