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2話~オレンジ色の下校~
夏休みも終わって9月。じりじりと照りつける太陽とセミの鳴き声が改めて夏だと感じさせる。
私達、1年C組は体育祭の係などについて決めていた。
「1年C組の体育祭実行委員がしたい人はいますか」
学級委員の男子がそう言うが中々面倒臭い仕事なのでやりたがる人はいない。
「じゃあ、私がします」
誰もいないので、私は挙手をした。元々運動が好きな方だし走るのは得意。でも、吹奏楽がしたくて陸上部には入らなかった。
「それでは、女子の実行委員は一ノ瀬さんで決定します。」
書記係が黒板に一ノ瀬恋歌と書いていく。
「男子は、いませんか」
また、学級委員が言うが挙手する人は中々いない。その時、
「じゃあ、俺します。」
と後ろから声がした。振り向くとスッと手を伸ばしたヒロが黒板の方を向いていた。
「そしたら、近藤くんと一ノ瀬さんで実行委員をお願いします」
学級委員長の言葉で話し合いは終わった。
「キーンコーンカーンコーン」
授業の終わりを知らせるチャイムがなり、皆は一斉に席をたつなり、話をするなりし始めた。
ホームルームも終わり、帰りの準備をしていると
「よっ、実行委員頑張ろうな」
ヒロが片手をあげて笑っている。
「うん。明日から忙しくなりそうだね」
苦笑いをして見せるとヒロも、困った顔をしていた。
「部活とか大丈夫?」
「あー、平気、自主練すればいいし」
ヒロはそう言って笑った。真面目だな…
ヒロは昔から本当にサッカーが好きで、私も練習には付き合ってきた。(ゴールキーパーだけだけど)
「そっか、じゃあよろしく」
「おう!」
そう言って私達は部活へ向かった。
「やっほー!恋歌」
後ろから、ポンっと肩を叩かれて後ろを向くと、同じ吹奏楽部の親友、児島瑠奈(こじまるな)がいた。瑠奈は高校にあがってから友達になって今では、一緒にいてすごく楽しい。
「お、瑠奈じゃん」
「ちょっとー、旦那と体育祭の実行委員だってー?」
「はっ!?そんなんじゃないし。もう、やめてよねー」
旦那とはきっと、ヒロのこと。瑠奈は私がヒロの子とが好きなことを知っている。
そんな冗談をいいながら部室へ入るとミーティングが始まりそうなところだった。
「すみません!」
2人で謝り席に着いた。
「起立。よろしくお願いします」
部長の挨拶で一同が挨拶をした後、部長の話があった。
「もうすぐ、体育祭が始まります。実行委員に選ばれた人もいると思いますが、練習を頑張りましょう」
短い言葉が終わり楽器を準備し、練習を始める。
「恋歌ちゃん!今日は曲を合わせようか!」
同じパーカッションの河下大揮先輩が話しかけてきた。
「はい!」
体育祭で演奏する曲を練習することになり、私は先輩達と色々な楽器を準備した。
吹奏楽部全体では43人いるがパーカッションは、先輩達を合わせて1年生2人、2年生2人、3年生3人と7人で活動している。
「じゃあ、Aからいくよ」
河下先輩の合図で演奏をする。
3年生は、
ドラムの河下先輩
大太鼓の真木先輩
シンバルの内藤先輩の3人。
2年生は
小太鼓の杉山先輩
もう1つの大太鼓を担当する野々山先輩
1年生はその他もろもろ。
鉄琴や、木琴、マラカスなど…
「ストップ!ちょっと、野々山くんと真木さん、音を聴いて!」
「「はい」」
河下先輩のアドバイスでより良い音楽になっていく。
「だんだん良くなってきてるよー」
顧問の品川先生がスタスタと歩いて来てにっこり笑う。
「はい!」
全員で威勢の良いあいさつをすると、品川先生は腕を曲げてグッドポーズをしてくれた。
「この調子で頑張ろう!」
真木先輩が柔らかい笑顔を見してくれて、その日の部活もすごく楽しかった。
部活が終わり18時。
私は1人でオレンジ色の空の下を歩いていた。
セミの鳴き声が聞こえてくる。
明日から体育祭の練習が始まるし、頑張らないと。
そんなことを思いながら歩いていると、後ろから肩を叩かれた。
「おい」
「わっ!?」
低く冷たい声がして、怖くなり反射的に頭を押さえる。だ、誰?
恐る恐る後ろを振り替えると金髪の男が立っていた。その男はとても大きくてタバコ臭い。
「す、すいません!」
何もしていないのに、口から謝罪の言葉が出てくる。
「お前、桜藤高校の生徒か」
ゆっくりと口が開き私の通っている高校の名前が出てくる。
「は、はい」
「一ノ瀬恋歌」
何で私の名前を知ってるの?何で?
怖くて涙が出てきそうになる。
「何で私の名前を知ってるんですか」
これが、私の精一杯の抵抗だった。
「俺のこと知らねぇのか」
前髪を上げるように顔を降る男。髪の間から見えた目の上には小さな傷があった。
「し、知りません。私、用事があるので帰ります !」
早口で言った後、私はその場から逃げようとしたがその男はとても強い力で腕を掴んだ。
「待てよ。おい」
「痛い!離してください…」
「お前、可愛いな。俺はお前と同じ高校の3年生。水野原豪、覚えとけ」
男は名乗った後、髪を撫でてきた。
「やめてください!」
恐怖が頂点に達したのか、私はその手を降りきってその場から全速力で走って逃げた。
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