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4話~宣戦布告~
翌日、私はいつも通り起きていつも通りに朝を過ごした。
8時に家をでて、通学路を歩く。
小学生の列がトコトコと歩いてくる。
「おはよーございます!」
1年生っぽい女の子が大きい声で挨拶をしてくれる。それに続いて他の子もぞろぞろと挨拶をしてくれた。
「おはよう。しっかり頑張りなよー」
私も、お手本として大きい声で挨拶をする。
小学生の頃、私ってこんなに挨拶してたっけなー、と思いながら学校に行くと私と瑠奈の席の周りに人だかりができていることに気付いた。
「おはよー」
警戒しながらも挨拶をすると一斉に周りにいた人達が私の方を向く。
「恋歌だ!大丈夫?」
中学校から同じクラスだった穂高由実が、私の方を見て叫ぶ。
その声を聞いて瑠奈が走ってくる。
「恋歌…良かった」
「瑠奈…」
「恋歌、昨日は急に倒れちゃって…」
ヒックヒックと泣きそうになる瑠奈。
「大丈夫だよ。力が抜けて倒れちゃっただけ。心配しないで」
「うん。ごめんね、助けれなくて…」
「大丈夫だよ!ほら、こんなに」
ブンブンと腕を振り回して見せると、ようやく瑠奈に笑顔が戻った。
ホームルームの
「キーンコーンカーンコーン」
2人で笑いあっているとホームルームの開始を知らせるチャイムがなり、私達は席についた。
「えーと、学級委員挨拶」
矢畑先生が入ってきて、いつも通りホームルームが進行された。
「えーっと、一ノ瀬。後で多目的ルームに来い」
ホームルームの終わりに矢畑先生が私の方を向いてボソッと言った。
「はい。分かりました」
なんのことかは予想がついていたので返事をした。
「はい。ホームルームおしまい!」
「起立。礼、ありがとございました」
学級委員が挨拶をし、ホームルームは終わった。
「恋歌、大丈夫か?」
ヒロがやってきて、そう言った。
「うん。おかげさまで!あっ、コーラありがとう」
「あー。おう」
そういうとヒロは頭をかきながら男子の方へ走っていった。
多目的ルームにつくと、近藤先生と校長が座っていた。
「失礼します」
一応、挨拶をして教室に入ると、校長が「そこ、座りなさい」と、前から二番目の席を指さしていた。
「まぁ、わかっていると思うが水野原に絡まれたことについて色々話を聞かせてくれるか?」
「はい」
「じゃあ、まず何をされたかー」
色々聞かれること10分。私は、これ以上私みたいな人がでないように真剣に答えた。
「ありがとう」
「いえ。これ以上、私みたいな人がでてほしくないので」
「そうか。じゃあ授業に戻ってくれ」
「失礼しました」
多目的ルームをでて、教室に戻ると誰もいなかった。
「そうだ。1時間目は、体育だった。」
そう思い出して女子更衣室へ急いだ。
緑色のラインが入った体操服を着ると、私は運動場へ走り、体育担当の村上先生に事情を話した。
「昨日色々ありまして、その事について矢畑先生と校長先生に事情を話していました。遅れてすみません!」
「いいのよ。矢畑くんから事情は聞いてるわ。大変だったわね、はい!準備体操をしてリレーの練習に参加する!」
村上先生はポンっと背中を押して「いっておいで」と、柔らかい笑顔を見せてくれた。
準備体操を入念にしてトラックを走る、皆の輪の中に入った。
「あっ!恋歌ー、遅いよ。もうすぐ、リレーが始まるから2週しておいでー」
体育祭の同じ白ブロックの、穂高由紀が走っている人を指差して言った。
由紀は、穂高由実の双子の妹でB組にいる。
「ありがとう」
私はそう言いトラックを2周した。
「はい!じゃあ、早速リレーをやっていきます。各チームの1番目の人はスタートラインにたって」
と赤、白、黄、青の4つのバトンを1番の人に渡していく。
そして、くじ引きで内側から青、黄、赤、白の順で並んだ。各ブロック、大体10人いて、1年生は40人でリレーをする。
「位置についてよーい、ドン!」
ピストルの音が響き、一斉にスタートすると内側から2番目にいた、黄ブロックが先導を切った。
だが、白ブロックはまだ最下位だ。
「頑張れー!」
いくら、練習とはいえ1位を取りたい。アンカーを走るため、時間がある。私は必死に応援した。
そして、ついにアンカーにバトンが渡るとき。
黄ブロックと青ブロックは4分の1の地点で接戦を繰り広げている。赤ブロックは白ブロックの9番目を走る人が抜かして余裕が生まれた。
「恋歌!頑張って」
14番目の橋本公太がバトンを私に託す。
「うん!」
一言だけ返事をして私は全速力で走った。
目の前に青ブロックと黄ブロックがいる。ここを抜かさなきゃ、1位は取れない。
私は全力で手を振り、スピードをあげた。
「恋歌!」
「頑張れー」
私への応援の声が聞こえる。走らなきゃ。もっと、速く。
「パン!」
ピストルがなり私は手を振り上げゴールテープを切った。
「恋歌ー!」
「ハァハァ」
皆が歓喜の声を上げて走ってきた。
「凄いよ!あんなに速く走れるとか、アンカー決定じゃん」
誉めてくれる皆に私は微笑み返す。
「はい!白組の人達、座ってよー」
村上先生がパンパンと手を叩いて知らせる。
「はい!」
ゾロゾロとトラック内に並んで座ると村上先生の話が始まった。
「はい!お疲れ様。1位は白ブロックね、一ノ瀬さん、速かったわよ」
私の方を向いてウインクをする村上先生はにっこりと微笑んだ。
「ありがとうございます」
控えめに頭を下げてお礼を言う。
「じゃあ、これで授業はおしまい!次は、リレーのポイントについて教えるわ」
そう言って、学級委員に挨拶を促し授業は終わった。
「恋歌ー。お前、めっちゃ速かったじゃん」
後ろから聞こえる声。この声はー
「ありがと。ヒロも速かったじゃん!」
タオルで髪を拭きながら走ってくるヒロ。
ヒロは、青組だ。今日のリレーでは2位だっけ。
「マジで?俺、あんかーにならないといけないんだって」
「なら、アンカー対決だ。頑張ろう」
「おう」
返事と共にヒロは私の頭にポンっと水色のタオルを置いた。
「ちょっと、やめてよー」
「ハハッ。いいじゃん」
「やだよー。だって汗くさいし…」
「は?お前なー!」
ボソッと呟いたが、本当はちょっと、いや凄く嬉しい。
ヒロはタオルを振り回して私に当ててくる。
「やめろー!」
私も反撃をする。
「謝ったら、やめてやるよ」
「ごめんって!やめてー」
「よし!もう、言わないか?」
「うーん。わからない」
「なら…」
「言わない言わない!」
そんなことを言いながら廊下を歩いていると、更衣室の前へついた。
「入らないでよね!」
「入るかバーカ」
冗談を言って、更衣室へ入ろうとすると愛ちゃんがいた。
後ろには、篠崎さんのと室岡さんがいる。2人は愛ちゃんの親友で、いつも一緒にいる。
壁にもたれ掛かって話している愛ちゃんをなるべく見ないようにして、私は更衣室へ入ろうとした。
「おい。あんた、ヒロくんと喋ってたじゃん」
「え…喋ってただけなんだけど…」
「言い訳とかどうでもいいからぁー」
篠崎さんが大声で叫ぶ。
「ご、ごめんなさ…」
「もう、ヒロくんと喋らないでね」
「で、でもヒロとは幼なじみで…」
「だーかーらー、幼なじみとかどうでもいいの。もう、ヒロくんに関わらないで!」
愛ちゃんは私を突き飛ばして笑った。
「ダサっ。こんな、ダサ女にヒロくんが惚れるわけないっつーの!」
「ハハッ。愛ちゃんの邪馬するからだって」
「行こー」
室岡さんが更衣室へ向かっていく。
「あんた、ヒロくんと関わったら何するか分からないから」
耳元で低く呟く愛ちゃん。
私は、どうすればいいか分からずその場に立ち尽くしていた。
ヒロ。ヒロはどう思ってるの?
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