ニッキ、怒る

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ニッキ、怒る

 この世界じゃない世界のどこかに、小さな森があった。森にはあらゆる動物が住んでいた。  そして森の一番はずれには、はぐれものの生き物、グリンと人間の子供のニッキ、そして虹色の鳥のレインが住んでいた。  グリンは茶色の丸い大きな毛玉みたいな姿をしている。手足も茶色で、木の枝みたいにヒョロヒョロしている。毛玉の下に、ギョロギョロした目があったけれど、いつもにらんでいるみたい。  目がグリングリンしているから、他の動物たちから「グリン」と呼ばれていたけれど、名前かどうかはわからない。もしかしたら、「犬」とか「クマ」とか「ウサギ」みたいに、動物の種類を表しているのかもしれない。  それとも、ただの「目玉がグリングリンの奴」という意味なのかもしれない。  ある雨の日、森に遊びに出かけたニッキは、怒って帰ってきた。グリンと暮らし始めて、ニッキが怒るのは初めてのことだ。  「もう! もう! もう!」と言って、雨で濡れた頭をぶんぶん振ったので、水しぶきがシャワーみたいに部屋中に飛んだ。  「どうしたんだ?」とグリンが聞く。  「もうったらもう!」  「ふうん」
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