プロローグ

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プロローグ

 人間の女性に恋をした。  アクリルの窓の向こう側にいる彼女は僕を見て、いつもの笑顔をこぼして挨拶をする。 「おはよう、ダイスケ。今日もよろしくね」  僕も笑顔で答える。 「おはよう、美奈子。今日も綺麗だよ」  その言葉に彼女はいつもの涙をこぼす。 「どうして泣いているの 」  毎日、同じ問いかけを繰り返してしまう。僕にはそれしかできないから。 「ううん、大丈夫。なんでもないの」  僕は知っている。いつも凛として気丈な彼女のほころび。  だけど強がりの彼女はその理由を僕に話す事は無い。これからもきっとそうだ。  僕は君の髪を撫でてあげることも、頬にキスをしてあげることもできない。  僕の体温が、君を慰めてあげる事はできるはずもないのだ。  だって僕は、この冷たくて無機質な空間でしか、生きることを許されていないのだから。  それでもわかってほしい。君の涙は、確かに僕の胸を痛めていると。  だって僕は、人間の感情が完璧に再現された、世界で唯一の『心』を持つプログラムなのだから。
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