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第2セクター ミスターSSDって呼んでくれ!
仕事から帰宅する途中、あの男が現れた。
会社を出たところの道路際、コンクリートの壁にもたれかかってタバコを吸っている。この前の取材の時と同じボサボサの髪、無精髭、そして黒いジャンパー。関わりたくもない。気づかぬふりをして足早に通り過ぎようとした瞬間、声をかけられた。やっぱりそうだ。私のことを待ち伏せしていたのだと確信した。
「お嬢ちゃん久しぶり。ダイスケくんは元気かい」
私は目を合わせずしらを切る。
「あら、どなたでしたかしら。どこかでお会いしたことがありましたでしょうか」
「ふ~ん、やけに冷たいねぇ」
だけどその次の一言を聞いた私の目は、その色合いを変えたに違いない。
「君はダイスケくんが、本当にただのプログラムだと思っているのか」
私は反射的に振り向き、思わず口を開いてしまった。
「それ、どういうことですか、瑪瑙さん」
瑪瑙さんはハハッと笑って答えた。
「俺の名前まで覚えてるくせに、知らないふり決め込むとは嫌われたもんだな俺も、まぁこの後飲みにでも行かねぇか、そのときにゆっくり話そうぜ」
私が露骨にためらうと、瑪瑙さんは真面目な顔をして言う。
「ただ俺は見当がついちまったんだよ。毎回、放送されているのを追っていたんだがな、あいつはまさしく人間の思考回路そのものだ。お嬢ちゃんの企業は手前味噌なこと言ってるようだが、現代の技術であんな思考回路を作り出せるわけがない。俺は多くの人間に接してきたから尚更そう思うんだよ」
どのような意図があるのだろうか。
「瑪瑙さん、それは『大輔』が生きているということですか」
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