第1セクター 『大輔』と『ダイスケ』

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 大輔は私と同じ大学に行くんだと受験勉強を張り切っていた。私は「馬鹿じゃないの、あんたが私と同じところに受かる訳ないじゃない」って思っていた。けれども結局、大輔は私が受けた大学に全部通ってしまった。そして私のお母さんから入学予定の大学を聞き出すと、自分もそこに入学するってさっさと決めた。  本当にしつこい奴で、ついには同じ職場に入社してしまった。ここ、スターシップ・ジャパン・カンパニーに。入社試験の面接で、私の順番は大輔の次だった。試験官の一人が南雲さんだったのを覚えている。 「先ほどの青年は、君とどのような関係なのかね」  その質問に私は驚いて、ただの幼なじみですと答えたけれども、その時の南雲さんは確かに好奇の目で私を見ていた。そこにはどのような意味があったのだろうか。二人が同時に入社することができたのは、南雲さんに何らかの考えがあったからだろうと私は推測した。つまり私は大輔と同じチームになって仕事をすることになるんじゃないかと考えた。連携の良さとか、そういうものを重視しているんじゃないかと想像していた。だけどそれは私の勝手な想像でしかなかった。私は大輔と別のプロジェクトにあてられた。  大輔のくせに、この競争率の高いイノベーション企業にどうして入社できたのだろう。面接試験でどのようなことを聞かれたのだろうか。だけど今となってはそれを訊いてみることはできない、大輔はもういないのだから。
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