第1セクター 『大輔』と『ダイスケ』

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第1セクター 『大輔』と『ダイスケ』

「パシャパシャッ!」  鳴り止まぬカメラのシャッター音。浴びせられるフラッシュの嵐。部屋には入り切れないほどの取材陣が押し寄せ、およそ半分の記者は研究室の外の廊下で待機せざるを得ない混雑ぶりだ。  ここはイノベーション企業であるスターシップ・ジャパン・カンパニーの開発部。新しい技術を開発することにかけては日本でも有数の企業で、多数の特許を取得していることでも有名だ。 「さぁ、本日もやってきました、世の中にはびこる、不思議な出来事の真実を暴く夜、『ディスクローズ・ザ・ミステリー』の時間です!  こちらが今や時の人、史上初の『心を持つ人工知能』の開発に成功した、スターシップ・ジャパン・カンパニーの牧野美奈子さんです! この女性が人工知能に人間の心を与えたという、天才様でいらっしゃいますか! 若くて美人ではありますが、一見、天才には見えません! 人は見かけによらないと言いますが、さていかほどのものでしょうか、楽しみですね~」  取材には慣れたつもりだったが、今回ばかりは相手が悪い。 『ディスクローズ・ザ・ミステリー』は収録をメディアに公開撮影させるコンセプトの番組だ。嘘を見破る瞬間をメディアに取材させることによって、番組の価値を引き上げようという魂胆で、ディレクターのいやらしさが丸見えだ。マイクを向けられた美奈子の表情が強ばる。 「我々スターシップ・ジャパン・カンパニーは、かねてから『完全な人工知能』の開発に着手してまいりました。そしてこの度、感情のアルゴリズムの再構築が可能となったため、人間の思考過程を完全に再現した、『心』を持つ人工知能の開発に成功しました。  これから我々は、この目の前にあるマシンに映る一人の青年を、決してCGと呼ぶ事は出来なくなるはずです」
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