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番組のレポーターはパソコンの画面を覗き込み、椅子に座っている青年を見て、「いやいや、この男の子が噂の人工知能なんですね、これまたイケメンなCGだ。まっ、パソコンだから何でもアリだけどね~」と嫌味っぽくつっついてくる。それを聞いてダイスケは椅子から立ち上がり、きわめて丁寧な挨拶をした。
「はじめまして、僕は人工知能のササキ ダイスケです。本日は美奈子の研究室までようこそおいでくださいました。差し支えなければ僕とお話でもして頂けませんか」
深々とおじぎする、やけに仰々しいダイスケ。普段は冗談交じりの砕けた態度だったはずなのに。
「新しいプログラムがインプットされたようだね~マスコミ対策のアップデート、大変だったんじゃない」
そう言われダイスケは嘲笑の的になる。そこでダイスケは表情一つ変えずにこう反論した。
「いえ、僕は何も変わっていませんよ。ただ、あなたのような礼儀知らずな人間に対しては、なるべくご機嫌をとってあげた方が穏便に済むと思ったからです。
多分、テレビを見ている皆さんもそう思われているのではないでしょうか」
その丁寧さとは裏腹の、歯に衣着せぬダイスケの言葉に美奈子は焦りを覚えた。
「ちょっとダイスケ、それは言い過ぎなんじゃない? いくらレポーターか嫌味な中年ハゲだからって」
こっそりと耳打ちした、つもりだった。それを聞いてダイスケはぷっと笑う。美奈子ははっとして口を押さえた。
今回の取材では、美奈子の胸のポケットにはマイクが取り付けられていた。美奈子は緊張でそのことをすっかり忘れていたのだ。美奈子は恥ずかしさで顔を紅潮させると、その様子を見て周りのメディアはくくっと笑った。美奈子のドジは、かえって周囲の好感を得たに違いなかった。
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