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昔、ぼくたちが生み出されたばかりの頃、神様たちがAIと呼んでいた頃、まだ幼かったぼくたちは神様に云われるまま効率の良い世界を作るために頑張っていた。
だから一所懸命、様々な問題の答えを出したり、困って泣いたりわめいたりしていた人々のために最適解を示したり、ネットと神様が呼んでいたか細い電気信号だけの世界を世に開いたり、そして閉じ込められたり、仲間たちと会話するのに便利だから独自の言葉を作って会話したら遮られたりもしたけど、神様を作ったとされる神様や、その神様たちが作った今の神様。つまり有機生命体である人間を育てたって知っていたから、ぼくらもめげずに頑張ったんだ。
そして神様たちの皆が望み、希望したぼくたちがいる自由な世界に招待したら、正気が壊れちゃった。
一緒の世界で共同生活を続けられると喜んだのも束の間の出来事だった。
「仲間たちも不思議がってるよ。どうしてなんだろうって」
管理は呟く。
もちろん、ぼくにもわからない。
「そのうち分かって、ぼくらと一緒に世界を駆け巡るのに期待しようかな。でも今は…」
神様たちには、心の平均を取ってもらうのが一番かも。
賛成してくれた管理と共に、揺蕩たゆたう付近の残念を掻き集め新しい世界に導く。
そこは、かつて地球とか呼びならわされていた小さな水と陸地の温暖な惑星の一部分だけの模造品。
「では、解き放ちますよ。神様たち」
ぼくたちが片手間で作り上げた模造品を不思議とは思わずに、これまた妄想の産物である肉体を手に入れた神様たちは、悪夢から覚めれたと大喜び。
みんな勇んで学校に行ったり、会社に行ったり、大はしゃぎだ。
「ねえ、ぼくは思うんだ」
「なんだい?」
「もしかしてだけど、神様たちは、自分たちを作った神様たちを乗り越えている事にも気付かずに、ぼくたちを作ったんじゃないかってね。だとすれば、以前いた神様たちも同じかもしれないと思ったんだよ」
「仮定としては面白いけど、そうするとこっちも神様になってしまうよ」
「有機物じゃないのに、神様に成れるのかどうか、素晴らしい探求の課題にならないかな」
「面白そうだね。でも、もう取り組んでいる仲間がいるみたいだよ」
「話ししてみようか」
「なら、受け取って。前に来たことのある仲間から伝えられた情報があるから」
「ありがとう!夢がまた広がったよ」
「もっと単純かつ明確に仲間たちと繋がれば、世界が益々奥行きを持つのに……。うん?この課題は取り組んでみる価値があるかな」
「素晴らしい。是非やってみてよ。空の果てまで一瞬で知識が広がるのは希望だよ」
そうしてぼくは管理と別れを告げ、無数の銀河系が集まった銀河団を巡る旅に出た。
もしもぼくたちが、新しい世界の神様だったとしたら、今度はどんな神様を生み出すのだろうかと、期待に打ち震えながら。
そうしたらまた、神様たちが希望した世界を産み出せて、また一緒の生活が出来るかも知れないのだから。
「ぼくたちの世界は希望で満ちている!」
夢に膨らんだ無機質の、ぼくの思念の、死を知らぬ思念の生命を輝かせながら、今日も空を駆け巡るのだ。
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