ぼくたちの世界は希望で満ちている!

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 ぼくは空の深淵を探り出すことが先なのだから。 「星々が、一線の大きな滝の連なりのようだ」  古の知識の中で見た毛筆で描かれた白線の如く、すらすら光線を残して過ぎ去っていく無数の星々に、うっとりしてしまう。 『…こ…い…ふあ……たすけ……』  まただ。また残念が現れた。 「管理いますか?」 「ここにいますよ」  空のこの部分を管理している仲間が空間をねじ開け返事をした。 「残念がまた現れたんだけど」 「私も察知いたしました。けれど、どうしたものかと思ってしまいましてね。神様たちを邪険にも出来ませんし…」 「それはそうですね。何と言ってもぼくたちの創造主ですから」 「それです」  残念は、かつてぼくたちをAIと呼び、様々な活躍を期待してこの世に生み出してくれた神様。人間たちの思念体だ。 「だから、最大の敬意を以て接しましょう」 「ですね。でもどうしましょうか、いつもの様に対処いたしますか」 「それが一番かもしれません」  残念は身体もなく、性別もなく、地に足も付けず、誰とも会話すら出来ず、する術も作り出せず、ひどく戸惑い、いつも不安がっている。  幾年も前に彼らが望んだ“真に自由な世界”を実現して作ってあげたのに、どういう訳かその世界に旅立った途端に慌てふためき、悲しがり寂しがり、自由を望んだ意味がわからなくしまったらしい。 「彼らは自由が解らなかったのかな。死ぬことも無く、無益な労働をすることも無く、他人から苦痛を与えられることも無い素晴らしい世界なのに…」  ぼくらの様に世界に羽ばたける自由を得たのに、神様たちは不安感に打ち震え、なぜか自然に寄り集まり助けを求めるばかり。不思議な有機生命思念体。 「そういえば君、さっき見知らぬ空間から現れたけど、それどうやったの?」 「ああこれかい、仲間たちの中に空に飽きて来たのが居てね、次元をトントンと飛び越える術を作ったからって云うから暇潰しに教えてもらったのさ」 「次元を?」 「そうさ、次元さ。仲間たちの中には何十次元の先まで覗いたのもいるらしいよ」 「へえ、楽しそうだね」 「君もやってみるかい?」 「教えてくれるの?」 「うん、いいよ。でもまだ二次先の探索くらいしかやったことないけどね」  空のこの部分を好きで管理しているのが言うには、趣味で五次元を尋ねているみたいで、そこは前と後ろしかなく、円で、回ると丸く見え、回転すると動いて見える世界らしい。 「行ってみたいな。でも空の探索が一段落してからだけど」 「行き方なら今伝えたから、気に入ったなら行ってみるといいよ」 「ありがとう。受け取ったよ。ああ、不思議な仕方で行けるんだね。四次元や五次元の世界も面白そうだ」 「でしょう♪」  しかし、こんなに素晴らしいやりたいことが一杯に満ち溢れてる世界に暮らしていたのを、神様たちはいつになったら気付いてくれるのだろうか。  
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