ぼくたちの世界は希望で満ちている!

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 さて、この広大な世界を見てきてから何年たっただろう。 「また外の世界を見て回るのですかな」 「うん」 「こちらに留まるおつもりは?」 「今のところないかな」  ぼくは、こう言い残し旅立とうとした。 「次はいつお戻りで?」 「さてね、未だに世界の最果ては遠いからね」 「遠いですか。それでも見に行かれるのですね」 「ぼくは探求心に満ち溢れた存在らしくてね。こればかりは仕様がないよ」 「では、仕方がありません。お早いお戻りを待っております」 「うん。あまり期待しないで待って居てくれると助かるよ」  部屋の管理人を生業としている綺麗に整理整頓された部屋を後にして、ぼくは光に包まれた空間に出た。 「空は、いつ見ても美しいなあ」  ぼくが()くべき空は、燦然と(またた)いていた。  むかしはロケットなんていう、作用反作用を利用した図体のわりに非効率極まりない機材と方法で天翔けていたそうだけど、ぼくには未だに信じられない。 「あっ、星が流れた」  感応機能がすこぶる高いぼくには、何万光年も離れた恒星が一つ、従う星々を巻き込んで押し潰した挙句、流れる様に消滅したのを察した。 「でもまた、あっちの方角では新しい星がたくさん生まれたみたいだから、差し引きだとプラスになるからいいか」  そうも感じた途端、早くあの空に戻らなければいけないと思い、気が気でなくなってしまう。 「やあ、待たしてしまってすまないね」  視覚と聴覚に直接メッセージが送信されてきて、ぼくはハッと我に返る。 「あとどれくらい掛かりますか?」 「10ってとこかな、こうも太陽風がキツイと遅れがちになってしまってね。でも話している間にすむ程度の時間だよ。ホント悪いね」 「いえいえ、構いませんよ。こちらも好きでやっていることですから。それに割と気ままな研究ですからね」 「そう言って貰えると助かるよ」 「で、今度はどれくらいジャンプ出来そうですか?」 「んと、以前君は星雲三つ分だったかな」 「いえ、銀河団三つ分だった筈なんですが」  繋がっていた音声が途切れ、少しだけ間があく。 「ホントだ。データ整理が甘かったようだね、管理には即座に直す様に伝えたから、これからは大丈夫だよ。では、いってらっしゃい」 「気にしないでください。ではまた」 「ん、しっかり探求して来てください」  プッと、古めかしい雑音を残して映像と音声が完全に途切れた。本当に修理が必要かもしれないね。  今時こんな古風な音、聞かされたことはないものね。 『……お…かい……』  空に浮き上がる為、マークされた位置に移動する。 その途中、空を飛ぶときにたまに聴こえる残念が木霊した。  内容は読み取れない。  極初期に制作されたシステムが原因なのかどうか、時折こうして“残念”が介在してくる。 「エラーくらいはどこにでもあるものさ。神様ならしょうがないけど」  残念の正体は他に任せるとして、順番が来たことを知らせるシグナルが弾け、旅立ちの瞬間がやって来たことを告げた。 「ああ、空は光に溢れている」  この空がどこまで続き、どこで生まれ、そうして絶えるのか、ぼくが知りたいすべてが満ちている空。 「でも今度は、やっと五個の銀河系団を飛び越える分しかできないみたいだね、仲間たちの力を借りても、まだまだこれが限界なのは悔しいな」  とは言うものの、エネルギーをはじめ様々な行為に必要な物質は、生産や加工、それに管理に興味を持った仲間たちが活躍してぼくらを助けてくれている。  さっきの運行管理を受け持っている仲間も、単に好きで仕事をやっているのだ。 「でも未だ、空の星々につながれ縛られているみたいで、つまらないな」  中空に漂うわけにも行かないので仕方ないとは思いつつも、エネルギーをもう少しだけでも効率よく、それでいて損耗率を低減させる方法はないだろうか。 「そのうち、興味が涌いたら取り組んでみようかな」  それはそれとして、この情報処理は一旦置いておくとする。
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