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「良し、今日は沢山採れたな!」
うっそうと茂る森の中、両腕一杯に様々な木の実を抱えてのしのしと歩きながら一つ持ったモモンの実をかじって食べるのは、オレンジの体色に竜のような見た目のかえんポケモン、リザードン。
「これでしばらくは食べ物に困らないな。んで、アイツは何処に・・・」
「おーいザード!」
ザードと背後で呼ばれたリザードンが振り返るとそこにはどっしりとした青の体格に四足で立ち、赤の翼を生やして頬に特徴的な突起を持つドラゴンポケモン、ボーマンダが。
「おうボーマ! そっちはどうだ?」
「へへへっ、ジャジャーン!」
ボーマと呼ばれたボーマンダが尻尾を前にもっていく。器用に尻尾に吊るされた大きな葉の篭の中には大量の木の実が入っている。
「おースゲェじゃねぇか!」
「あーっまたつまんでいたな! 巣に持っていくまで我慢だって話でしょ!」
「ち、違うぞこれは・・・木の実が俺の口に勝手に飛んできたんだ!」
「はいはい・・・そういう言い訳も聞き飽きたし、君の性格上今に始まった事じゃないから僕はもう諦めたよ・・・」
「さっすがボーマ! 我が愛しき妻よ!」
「ばっ・・・馬鹿! なにが妻だよ! ほら、そろそろ巣に戻るよ!」
「悪い悪い、冗談だって! おーい待てよー!」
顔を赤くさせてプイッと背けるボーマだが、木の実が篭から落ちそうになるほど尻尾がブンブンと揺れているのは本当は満更でもないということだと、長年一緒に暮らして知っているザード。
「・・・本当は冗談じゃねぇんだけどなぁ(ボソッ)・・・」
「ん? 何か言った?」
「な、何でもねーよ!」
そそくさと巣に戻ろうとするボーマを追いかけながら謝るザード。追い付いたザードのボソボソ声が聞こえなかったのか、何を言ったか聞いてくるボーマに対し、ザードは照れ臭そうにポリポリと頭を掻きながら何でもないと答える。
その二匹の光景を、背後の空から見ている存在達に気づかないまま──
「───っ!? あぶねぇ!」
「えっ?! 何───」
何かの気配に気付いたザードが抱えていた木の実を投げ捨て、隣のボーマを引き込む。
訳が分からずザードのされるがままになるボーマだがその直後、先ほどいた場所が爆発し辺りに砂埃が立ち込める。
「誰だっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・
ボーマを抱えたままのザードは直ぐ様立ち上がり、敵意を込めた顔で辺りを見渡す。
砂埃が立ち込める中、木の葉が掠れる音だけが辺りに響きわたる。
暫くして砂埃が収まり晴れると、ガサガサとある茂みから音が聞こえた。
「・・・そこか!」
その茂みに鋭い視線を投げつけるとすぐにそこに飛びかかり、鋭くとがった巨大な爪で振り下ろすドラゴンクローを放つザード。
だがドラゴンクローが当たる直前に茂みから大きな影が飛び出し、ドラゴンクローは茂みを切り裂くだけの空振りになってしまう。
「ガッガッガ・・・。よく気付いたな」
「てめぇ・・・! いきなり俺達に攻撃して何のつもりだ?」
茂みから現れた大きな影・・・ゲンガーはニヤニヤと笑いながら攻撃を構えているザードを見つめる。
「なぁに、ちょっと私と遊んでくれないかな・・・と、思ってな」
「は?」
「私の遊び相手になってくれ。そう言ったのだが理解出来ないのかな?」
「ふざけんな! 俺を怒らせた事、後悔させてやるから覚悟しやがれ!」
怒りのザードは口に炎を溜め、吐き出そうとした。
だが──
「ダメだよザード! 『かえんほうしゃ』をしたら森が・・・!」
「はっ・・・! ちっ、だったら!」
ボーマに諭され口の炎を消し、空を翔び急旋回してゲンガーに向かって降下、加速して硬い翼を相手に叩きつける『はがねのつばさ』を放つ。
それを紙一重で避け、両手に黒い影の塊・・・『シャドーボール』を溜め、それをザードに向けて攻撃する。
「なめんな!」
自身に襲い掛かる『シャドーボール』を『ドラゴンクロー』で切り裂き、そのままゲンガーに肉迫し『ドラゴンクロー』の連擊をするザード。
そんな戦いの様子を見ていたボーマだったが、そのボーマの影がユラリと蠢いているのに気付かず、影が次第にボーマの背後でゆっくりと変形していく。
「え・・・? うわああぁぁぁっ!?」
ボーマが背後の気配に気付いた時にはすでに遅く、もう一匹のゲンガーがボーマに『サイコキネシス』を放ち、動きを封じてしまう。
「だーいせいこう! ゲン兄、うまくいったよー!」
「よくやった、ガー」
「なっ・・・!? もう一匹居やがったのか!」
「う、動けない・・・!」
「ボーマ、今助ける!」
「おーっと、そこから一歩でも動いたらコイツがどうなるかなー?」
「何っ?!」
「ザード、僕の事は気にせずソイツらを・・・ぐっ?!」
「てめぇら、人質なんて卑怯だぞ!」
「勘違いしては困るな。私は遊んでくれないかと言っていたが、バトルするとは言ってはないぞ。さぁどうする?」
「ぐっ・・・畜生・・・!」
人質のボーマを盾にされてはどうすることも出来ず、ザードは『ドラゴンクロー』を解き、降参のポーズをとる羽目になってしまう。
その様子を見ていたボーマが何か言いたそうにしていたが、ゲンガーの『サイコキネシス』によって口も封じられてしまっているのか、「んー!んんー!」とぐぐもった声しか出せなくなってしまっている。
「素直で宜しい。 さて・・・」
人質を取られ抵抗が出来ないザードにゆっくりと近付き、ザードの目線に合わせるゲンはザードに強い暗示をかける。
「うっ・・・『さいみんじゅつ』か・・・!」
「抵抗出来ない君はすぐに眠りにつくだろう。 安心して眠りたまえ。」
「く、そ・・・・・・」
カクンを頭が項垂れ、深い眠りへと落ちてしまったザード。
それを見届けたゲンは意気揚々とザードの背後へと回り込む。
「ガッガッガ・・・これで準備は出来た。それでは・・・」
そう言いながらゲンはザードの背中、翼の付け根辺りに右手をつけるとズブズブと右手がザードの中に入っていく。
右手が入ったと同時にザードの体がビクンと跳ねるが、起きる気配が全く無いようで未だに頭が下を向いたままである。
「ん! んん!?」
「ゲッゲッゲ・・・何してるかって? アイツの中に入ってアイツの身体をいただくのさ!」
「んんんっ?!」
「ガッガッガ・・・見ているが良い。君の相棒が為す術もなく私によって支配されていく様を、な。」
その光景に唸っているボーマの意図を察したのか、ガーが今ゲンがしていることをボーマに説明をする。
それを聞いてボーマは真っ青な顔でゲンに向けていた顔をザードに向け、無駄だと分かっていても必死に声を出そうとするが、その間にもガーはザードの中へと侵入し、その度にザードの身体はビクンビクンと痙攣する。
そしてガーがザードへと入りきり、少しして下を向いたままのザードの顔がゆっくりと上がる。
だがザードの目はゲンガーと同じ充血したような目へと変わり、完全にゲンに乗っ取られてしまった事を意味していた。
「ガッガッガ・・・うまくいったようだな」
「んー! んんーーー!!」
「ガー、ソイツの『サイコキネシス』を解いてやれ」
「ゲッゲッゲ、りょーかい!」
乗っ取ったザードの身体を確かめるように動かしながら、ガーに『サイコキネシス』を解くよう言うゲン。
ガーは素直に聞き『サイコキネシス』を解くと、解かれたボーマは直ぐ様ザードへと近付く。
「ザード、ザード! 目を覚まして!!」
「無駄だ。そのザードという者は私が乗っ取った事で意識が無い状態になっている。いくら呼び掛けようが起きはしない。」
「そ、そんな・・・!」
必死にザードを呼び掛けるボーマだが、サードに憑りついたゲンの言葉にボーマは呆然とし、「僕が・・・僕が油断しなければ・・・!」と嗚咽を漏らしながら力なく地面にへたり込む。
その様子にゲンはザードの顔でニヤニヤと笑いながら、ボーマの頭に優しく手を乗せる。
「・・・そんなに返して欲しいか? 君の相棒を。」
「うぅ・・・当たり前だ!」
「それなら、私が出す条件を飲んでくれたら君の相棒を解放してあげよう。」
「ほ、本当か!?」
「あぁ、私は嘘が嫌いな性格なのでな。約束はちゃんと守ろう。」
「ゲッゲッゲ! ゲン兄の言うことは本当だぜ! そこは安心しな!」
「・・・分かった。お前達の条件を飲もう。それで、条件は?」
「ガッガッガ。いやなに、難しい事ではない。さっきも言ったが私が満足するまで遊び相手になってくれるだけで良い。」
「遊び・・・何をするんだ?」
「ガッガッガ・・・それはな───
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