決意

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「こ…こんなこと……」 目の前の信じられない光景に、ジュリアンはなす術もなく立ち尽していた。 「わ!な、なんてことだ!」 騒ぎを聞きつけた近所の住人らしき男が、扉から中をのぞいて驚きの声を上げた。 「この町に自警団はあるか? あの男を引き渡したい。 あいつが、スージーを…」 「ディックじゃないか! あの野郎、まだスージーのことを諦めてなかったのか! よし!待っててくれ!今、皆を呼んで来るからな!」 男は外へ駆け出した。 「ラリー…」 先程の男は、数人の男達と共に息をきらしながらすぐに戻って来た。 その間、ラリーはスージーを抱き締めたまま涙を流すばかりで、ジュリアンの言葉もラリーの耳には届いていないようだった。 ディックは、男達に両脇を押さえられながら連れ去られて行った。 「ラリー、大丈夫か?」 ラリーは、ただただ涙を流すばかりで、ジュリアンの声に返事をしない。 「ラリー!」 先程の男の呼びかけにもラリーは、顔を上げることはなかった。 「……すまないが、ラリーのことを頼む…!」 男に向かってそう言い残し、ジュリアンは宿に向かって駆け出した。 * ジュリアンは、テーブルの上のエレスチャルに恐る恐る手を伸ばす… エレスチャルに指が触れようとした瞬間、ジュリアンの手が弾かれたように遠退いた。 『……ジュリアン…何かあったのか?』 いつの間にか石の中から現れたエレスが、ジュリアンに問う。 「エレス…スージーが…スージーが…男に刺し殺された…」 「スージー?……あぁ、ラリーの妹だな? なぜ、そんなことになったんだ?』 「俺にもよくわからないが… 俺とラリーが家に行ったら…もう刺し殺されていて、その傍に男がいた…」 『そいつが犯人だったのか?』 「そうだ…」 『……それで、おまえは今何をしようとしていたんだ? まさか、あの力を使おうとしていたのではあるまいな?』 「エレス……俺…どうしたら良いか、よくわからないんだ。 だけど…やっぱりあのままにはしておけない…! さっきのラリーの姿を見てたら、なんとしてもスージーを助けなきゃならないって気になって…」 『そうやって、万一、スージー以外の誰かが死んでも構わないのか? この前のポールのように…』 その言葉に、ジュリアンの瞳は大きく見開かれた。
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