一人の僕と君で

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 僕たちは引っ張られると増えるわけだけど、クラスで僕ほど引っ張りだこな人はいない。  放課後はいつも僕の取り合いが始まる。  引っ張るのは女子。それも、彼氏がいない子たち。  彼氏がいるのに他の人を引っ張ってくると浮気を疑われるので、彼氏持ちは取り合いに参加しないのがマナーだ。  男子が僕を引っ張らないのは、僕が運動が苦手だからだ。  例えばサッカーをやるとして、強い人を十一人で引っ張ればそれでドリームチームが一つ完成してしまうわけで。  だから運動が苦手な人にはお呼びがかからないのは当然なわけだ。(ちなみにスポーツの公式な試合などで強い人を増やすのは違反とされる)  そういうわけで僕は今日、七人の女の子に引っ張られて分裂して、それぞれの予定に付き合った。  こういうのを羨ましいと思う人は多くて、僕も最初は羨ましがられたものだが、今では羨ましがる人はいない。何故なら僕が選ばれるのは僕が丁度いい男子であるからに過ぎないからだ。  丁度いい男子とは、丁度いい男子である。  例えば買い物の荷物持ちに丁度いい男子であり、カラオケでひたすら合いの手を入れさせるのに丁度いい男子という意味だ。  結局はパシリというか、そんな感じなので友達からは「今日もお前は大変だなぁ」と労われていたのだけど……今日はいつもと違う事があった。  
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