看板のない紅茶屋さん

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 ふわっふわの長い髪を二つ結び、前髪には銀色の細い髪留め、と茶色のエプロン。 「あの……葉っぱ──じゃなくてっ、お茶っ葉買いに来たんだけど、ここお店で合ってます?」 「合ってますよ」  どうぞ、と目の前のカウンターに、と案内してくれたので座る。 「生物部のおつかい?」 「そう……──って、俺何も言ってないのに、何お前」 「初対面でお前は失礼だな」  それもそうだ、謝る。 「隣のクラスなんだけど知らない?」 「え、まじ、タメ?」 「うん。お前とタメだよ」  同じように言って少し笑った彼女をやっぱり俺は知らない。  名前も知らない。 「──さて、今日はどんな言葉がいいのかな」
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