看板のない紅茶屋さん

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 っていうか、ふんわりふわふわの見た目ときっぱりきぱきぱの喋り方がちぐはぐ。  すると彼女はカウンターの中の横に行ったかと思ったら、すぐに何かを手に戻ってきた。 「淹れたて冷えたて。飲む?」 「いーの?」 「ほんとなら四百円。でも今は運がいい、あたし用のが余分にある」  ガラスポットに赤茶色が泳ぐ。  俺がうんとかすんとか言う前にグラスにめいっぱい氷を入れていく。 「──良い選択。好みだと嬉しい」  俺が選んだのはすっぱ甘いリンゴの匂いのお茶っ葉、アップルフレーバーティー。  中身はこんなん、と見せてもらった小皿には、リンゴの実も混ざっていた。 「いただきます……」  なんとなく恐る恐る、口をつける。  一口、ごくん。
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