01 キャンパス

2/2
前へ
/3ページ
次へ
『外に出て何かしてないと落ち着かないな』 『あ』 『新歓行ってみようかな』  というヒナタからの連続したメッセージに慌てて「おれもいく」と布団の中で返事をしたのが正午すぎ。  高校時代からヒナタは老若男女問わず人目を引く。さらに悪いことにヒナタの方も愛嬌のかたまりなので、どんな誘いにもほいほいとついていくのだ。  岡見にとってはそれが悩みの種だった。  少し警戒したらどうなんだと注意したことがあるが、うまくかわされた。  というよりもヒナタが「おかみんは人を信じなさすぎだから、俺らが一緒にいればちょうどいいんだよ」と少し照れたような笑顔で言ってのけるので、岡見がそれ以上の反論の気概を完全に失ったのだ。  有象無象のはびこるキャンパス内をヒナタひとりで歩かせるわけにはいかない。新歓の様子を軽く見て回ればヒナタの気は済むだろう。  あわよくば二人でぶらぶらと上手いラーメン屋でも探して夕食をとりたい……などという下心は胸のうちに押し込め、岡見は鏡の前でシンプルなニットとシャツに身を包み、それから髪をきちんとセットしたのだった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加