本編

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 愛してる、なんて感情は一部の人しか持っていない、というのが個人的見解。  ガシャン、と屋上のフェンスに手をついて校庭を見下ろした。そこには仲のよさそうなカップルが見えて、はぁ、と溜め息をつく。  愛してる、なんて一時の淡い感情。そんなものに振り回されるなんて馬鹿馬鹿しいったらありゃしない。  俺の母親は何回も結婚を繰り返してその度に失敗。嗚呼なんて無駄な繰り返し。  男をとっかえひっかえする母親が嫌で高校入学と同時に1人暮らしを始めた。その時最初から最後まで手伝ってくれたのは義姉だった。3人目の父親の連れ子で親が離婚したあとも何故か義姉とは繋がりがあった。  義姉は俺と正反対で愛はステキよ、なんて言ってのける。去年結婚して夫一筋らしい。そんな風に人を愛せる姉を少し羨ましく思いながら自分には無理だろうとまた溜め息をついた。 (...好きとか愛とかめんどそう)  口べたで気持ちを伝える事が苦手な俺はあんまり人と関わらないようにしていた。深く関わってもきっとろくな事がない。  人を遮断するように前髪を伸ばして眼鏡をかけてみた。眼鏡はもともと目が悪かったし顔を隠すには丁度いい。  長い前髪をかきあげてまた校庭を見つめた。さしても面白くない。 (...昼休みまで外で遊ぶなんて疲れるだけなのに...。)  サッカーをしている連中を見つめていればガチャリとドアのあく音がした。  ドアの方に視線をうつせば見た事のない赤色に近い茶髪の男が立っていた。長い髪をかきあげて結び、Yシャツはばっくりと開いている。ズボンはずり下がっていわゆる腰パンってやつだ。派手な格好に負けずと整った端正な顔。  ソイツもコチラに気づいたようでにっこりと言った。
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