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アタイはね、主人公よりむさ苦しい男が愛らしいのさ!!
コーストガード条約機構。
人類が地球より宇宙へと移住する上で、どの国もが争わず、平等に宇宙開拓を安全に行うために締結された集団安全保障条約機構。
結果、2000年後の現代。コーストガードの秩序により、各国の文化や秩序、思想などに隔たりなどは完全に薄れ、単一国家に近いほどまで一元化していた。まさに人類誕生以来、ようやく迎えた人類間の平和である。
条規天下泰平暦2001年。
突如としてその平和は終わりを迎える。
人類が宇宙へ進出して初めて出会った。地球外の生物≪深海魚≫。昨今、地球の深海で発見された新種の深海魚ディープブルーに似ていたためにその名がついた。
彼らは地球の海水を欲していた。この広大に無限に広がる宇宙を探しても地球の海水はとても希少価値が高いようだ。
そこから14年間にわたる≪深海魚≫とコーストガード条約機構による戦乱が幕開けとなる。
地球、コーストガード条約機構総本部――京奈市。京都と奈良を併合し、市町村とは別の「市」として管理することにした。
京奈市は南北の2個の区によって構成される。北都と南都。北都は京都をさし、南都は奈良をさす。
京奈市南都区のどこかに住宅街。
「な~~~。サセコ。今日、授業が終わったら一緒にさ、ゲームセンターに行かへんか? 新しいゲームが入ったんやて♪」
彼の名は静鈴鹿イヤミロウ。市立京奈上等工科学校の生徒である。セミロングで女性っぽい顔立ちだが、れっきとした少年である。サッカー部のエースであり、部長代理である。
彼が誘っているのは幼馴染の京奈上等工科学校の女学生、サセコ・プエルトリコバーニング。
「だぁほイヤミ!! また、遊ぶことばっかり!!! サッカー部のマネージャーとしてそれは見過ごせないね!!! アタイはね、助監督からあんたをサボらせないように厳命されているんさね!!! 諦めるんだね!!!」
在日アメリカ人のサセコ。日本人の父とアメリカ人の母の間に生まれた。イヤミロウとは同じ京奈上等工科学校サッカー部の部員である。
彼らの斬る学生服は白が基調。宇宙進出を続ける人類の平和と安全を守るコーストガード条約機構の将兵のトレードマークカラーと同じである。
「そんなんイヤヤ!!! ワイは≪深海魚≫と戦う将来で終えるのはイヤヤ!!! いつ、コーストガード条約機構総本部にしてコーストガード正教総本山――京奈神宮から招集がかかったらワイらはコーストガード将兵として奴らと戦わなアカンのや。今のうちにスクールライフを楽しまなアカンやん!!!!」
「関係ないさね!!!! アタイらはサッカー部の練習や試合を頑張ってスコアをたたき出さないといけないんさね!!!」
短い丈のブリーツスカートを閃かせながら思いっ切りドロップキックをイヤミロウにかます。イヤミロウは叫びながら吹っ飛んでいく。
「アンタの子守りはアタイの担当なんさね!!!! 簡単に逃がすわけないさね!!!!」
近くの電信柱に後頭部をブツけて、イヤミロウは大きなタンコブを作り、失神する。サセコはイヤミロウの足を引っ張って部室を目指す。
歩道を10分歩けば、上等工科学校にはたどりつく、助監督に幼馴染を引き渡したらマネージャーとしてサッカー部の運営に尽力しないといけない。
するとサセコの目の前に1匹のブルドッグが現れる。
素材提供元:sozai-good
「新星海のアルギュロスのメインヒロイン、サセコ・プエルトリコバーニングだワンねい?」
唐突にブルドッグはサセコに対して人語で話しかけてきた。サセコはありえない事態に驚いたが、この常軌を逸脱したキーワードに浮かんだのが「≪深海魚≫」である。彼らを「魚人」と呼ぶ団体もいる。何故ならばコミュニケーションの手段があるからだ。
≪深海魚≫はとにかく地球の海水が欲しい。そのために和平を結ばず、一方的に侵攻してきているのだ。一応、イヤミロウもサセコも軍人である。最低限の武装、拳銃を持っている。拳銃とスマートフォンを兼ねた。ピストルスマートと呼ばれている。
スマートフォンに銃口と銃把がついてる。ピストルスマートを取り出し、発砲する。≪深海魚≫は敵性異星人なのだ。瞬殺しても刑罰にはとらわれない。彼らは海水のためならば容赦なく人間を殺すからだ。
ピストルスマートから発砲された弾丸はブルドッグに着弾しようとしたが、ブルドッグは簡単に回避する。
「安心してくれだワン。吾輩は君らの世界というか作品というか、まったく蚊帳の外の生命体だワン。ただ、混ぜたなくなっただけだワン♪」
「≪深海魚≫!!! 地球は絶対にお前らの手になんか渡さないさね!!!」
サセコは続けて次弾を放つ。しかし、ブルドッグは猫のような身軽さで弾道から逃れる。避けながら犬らしくない、人間のような笑顔を形づくる。猶更、そのブルドッグだけが固有の異常な犬種だと判明している。
「≪深海魚≫!!! 中にはどんな生物にも変態できるタイプもいるさね!!! 市立京奈上等工科学校1年生。ア式蹴球部隊社会生態学徒のサセコ・プエルトリコバーニング!! アタイがお前を退治するさね!!!」
次弾を装填し、速射していく。しかし、ブルドッグは射線軸、弾道、着弾点をあらかじめ知っているのかの如く、身を翻して回避運動をとる。
「ブルドッグの姿をしているのは吾輩の愛犬とほぼクリソツだからだワン♪ ま、こっちの家庭事情は関係ないわん♪ 君は吾輩の脳内補完、変換、妄想の術中にいるんだワン♪ 他の誰もが吾輩の脳内を知れば……。奇異な視線。冷酷な視線を注ぐだろうだワン♪ 吾輩にとって周囲はどうでもいいだワン♪ ただ、君は吾輩の自慰的行為の延長線上にいるただの素材だわん♪ ちなみに自慰といっても自己満足という意味だワン♪ それじゃーそろそろ行くかワン♪」
ブルドッグは連弾を避けながらついにサセコの口元へと顔面から突っ込んでいく。それはブルドッグなりのディープキスだった。
「やめるんだよ!!! およし!!!! ≪深海魚≫!!!!」
「ディープキッス♪ 舌ペロペロ♪ んちゅ♪ んちゅ♪ ああ~~これが自分の脳内補完、変換、妄想だと思うと……精神疾患しまくりだワンね~~♪」
深々とサセコの口に舌を入れ込んでなめまわし、堪能する。
サセコは即座にブルドッグを掴んで投げ捨てようとしたが、いきなり急激な睡魔に襲われた。意識が途切れる。まるで即効性の睡眠薬を飲まされたかのようだ。
路地へと突っ伏し、イヤミロウと同様、気を失った。
ブルドッグはサセコのファーストキスを奪ったのを上機嫌のためかニンマリと人間らしい笑顔になる。存分に堪能したようだ。
「これで吾輩のお気に入りの同人作家の2次創作のサセコ・プエルトリコバーニングと原作のサセコ・プエルトリコバーニングの意識が入れ替わったワン♪ 吾輩は中学生当時、新星海のアルギュロスに撃ハマリしたワンねい♪ 俗称、セカイ系だわん♪ 新鮮味があってだワン♪ 思春期の吾輩にはスパークしまくったワン♪ よく親が黙って通販で購入した成人向け同人誌を隠れて見ていたワンねい♪ それでもってだワン♪ リメイクしてからもストーリー刷新されるわ。新キャラ追加されるわで吾輩の神作品だワン♪ さ~~~~~~これから正統派である原作がどのように改悪されていくかが楽しみだワ~~ン♪」
敵性異星人≪深海魚≫の同胞ではない、謎のブルドッグはそのまま、何処かへと消え去った。
数分後、先に静鈴鹿イヤミロウが気がついた。そしてすぐ近くで倒れて気を失っている幼馴染に気が付く。心配になり、ただちに起こそうとする。
「サセコ!!! どうしたんや!!!! なーーて!!!! ワイが遊び惚けてお前さんに蹴られて失神するんはいいんや!! せやかてお前さんが気絶したらアカンやん!!!!」
交通事故にでも遭遇したのかと本当に心配になった。イヤミロウにとってサセコは兄妹のようなものであるが、好意を寄せている異性の1人でもあった。
何度もサセコを揺さぶるとようやくサセコは気がついた。ただ、サセコは目覚めた目前にいるのがイヤミロウだと分かるといきなり表情を険しくさせる。そしてイヤミロウを突き飛ばす。
「汚らわしい手で触るな!!!! だぁほイヤミ!!!」
イヤミロウが触っていた両肩をサセコは自身の手ではたき落す。まるでイヤミロウに触られたことが不潔に感じたかのように。イヤミロウとサセコは昔から距離間は短い。よく喧嘩もするし、小学生を卒業するまでは一緒にお風呂を入ったりもしていた。それがイヤミロウを生理的に拒んでいるような反応をみせる。
「サセコ……?」
イヤミロウにはただ理解できない。あまりに彼女が豹変したからだ。
「何でアタイが失神しているんだね? 先ほどまでたくさんのおじさんと寝祭り騒ぎだったのに……。寝室じゃないの? 何で校舎近くの歩道に? いるんだね?」
様子がおかしい。イヤミロウにとって彼女はどこか別人のように感じた。
「覚えていないんなら……しゃーーないわ……。とにかく助監督からワイがサボらへんように言われているんやろ……。せやから部活動に戻るさかいに……」
イヤミロウはユニフォームが入ったスポーツバッグを背負うと校舎を目指す。サセコも自分が何故、ここにいるのか理解できていない。けしてサセコは記憶喪失であって記憶喪失ではない。記憶の食い違いがあるだけだ。ここはサセコにとって知っている世界のようで、サセコにとって初めての世界でもあった。
イヤミロウとサセコは10メートルくらい間隔を空けて歩く。イヤミロウはサセコに話しかけようとすると、サセコはイヤミロウと視線を合わすのが嫌なのか違う方向を見る。そして道中にいる下卑た男性ばかりを探してはニンマリと涎をたらしながら男性の下半身を眺める。
「あのおじさんは性根が腐ってそう……。どういう内容で寝祭り騒ぎをしてくれるさね♪ お汁がいっぱい落ちそう♪」
サセコが中年や老齢の男性を好んでいることにイヤミロウは驚く。サセコが好きな男は不明であるが、仮に好意を寄せたとすれば、サッカー部のOBで助監督代理をしているあの人くらいだ。
ついに市立京奈上等工科学校に到着する。この教育機関は実はコーストガード条約機構総本部直属の特殊部隊である。組織内でも大きな発言権を持つ軍閥である。そのためか校門には重武装した歩兵が衛兵として警備をしている。
サセコとイヤミロウは校門にいる衛兵に挨拶をして校内へと入る。グラウンドを抜けてサッカーコートがあるサッカー部の建物へとたどり着く。サッカー部の建物はまるで航空機の大きな格納庫そのものであった。建物の壁には「学徒遊撃混成大隊――ア式蹴球部隊」と書いてある。
「じゃあ、ワイは部室でユニフォームに着替えて練習に合流するさかいに。サセコはマネージャー業務……サセコ!!!!」
イヤミロウは驚愕した。
なんとサセコは近くで雑草の伐採をしている用務員の男性を押し倒し、そこへと騎乗位に乗っかり、サセコは表情を恍惚にしながら用務員の男性の胸部を撫でまわす。そして舌なめずりをするのだ。
「良いじゃない。おじさん~~♪ おじさんの顔付きからアタイをいやらしい目つきでガン見していたね? いいさ♪ アタイと今ここで寝祭り騒ぎをしようさね♪ さぁ♪ さぁ♪ アタイはあれから色々なおじさんを食い物しているんだね♪ さぁさぁおじさんのテクニカルはアタイを極上の世界へといざなってくれるんだろうねぇ?」
「きゃ~~~やめて~~~~~!!!!!!」
悲鳴をあげる用務員の男性。サセコは用務員の上着のボタンを外そうとした瞬間、即座に急行してきたイヤミロウに羽交い絞めにされる。
「何するんさね!!!! アタイは今、この醜いおじさんを食い物にするんだい!!!! 使い物にならないお前なんかお断りだね!!!!」
心底嫌っているイヤミロウの脇腹や背中に暴れながら殴打する。
「どうしたんだサセコ!!!! いきなりさ!!!! ヤバイぞ!!!! 用務員さんが迷惑しているやん!!!!」
「うるさい!!! あっしはお汁がほしいんだよ!!! いっぱいいっぱいお汁が欲しいんだよ!!!! お前の使い物にならないお汁なんてまっぴらさ!!!! だぁほイヤミ!!!!」
用務員を襲いたくて襲いたくて我慢できないサセコ。イヤミロウは羽交い絞めにしながらなんとか用務員から引きはがす。
「おじさん……すんまへん……。この子な……とても病んでいるねん……。せやから先生がたには黙ってもらえまへんか?」
「分かったよ。今のはなかったことだ。お嬢ちゃん。あんたの肢体をいやらしく見てもうてスマンかった……。ワシには妻や娘がいるから……ゴメンな……」
「いいのよオジサン!!!! アタイはそんなオジサンと寝祭り騒ぎをしたいさね!!!! アタイはカモン、カモン、カモンベイベーさね!!! オジサン!!!」
恥辱を強要するサセコ。それを叱るイヤミロウ。そこへ部室から1人の教諭が駆けつけてきた。
「HEY!!! どしたThisか? サセッコマネージャー? Ou!!!! Ou!!!! 只今ハプニング真っただ中!!」
中学生と背丈がそれ程大差がない。留学生の中学生だと思われていもおかしくない。サッカー部の助監督、ジェーシィ。ピンク色のジャージを着ているアメリカ人である。
「先生!!! すんまへん!!! サセコがいきなり用務員のおじさんを襲いかかって脱がそうとしたから怒っているんですんや!!! 助成をお願いしますさかいに!!!」
「OKぇ♪ サセッコさん!! ハップニングサマータイムはまだダメですよ~~!! 学校を卒業して成人してからで~~す♪」
「助監督も何を言っているんだい!!! アタイと一緒に放課後に京奈市のネオン街へ男を漁りに行ってご乱心プレーしたじゃないかえ? 何、嘘ついているんだい?」
ジェーシィもサセコが何を言っているのかが理解できない。部活動をサボろうとしたイヤミロウを捕まえるために1時間前にサセコに指示を下した。その時のサセコはいつものマネージャー業務に専念するサセコだった。
しかし今、目の前にいるサセコはまったくの別人のように豹変している。
「とにかく鉄拳制裁をくわえておとなしくさせるThis!!」
口答えをするのはご容赦するジェーシィだったが、自分のことを淫乱みたいな教諭と罵ったことに憤怒し、それを撤回した。サセコの頬を思いっ切りビンタする。サセコも思わず驚いて大人しくなった。
「助監督……どうして……一緒にご乱心パーティをして同性同士イチャラブもしてからの……寝祭り騒ぎをしまくったのに……。おじさんたちを掘りまくった師弟関係なのに……」
とにかく放心状態のサセコをこのままにせず、助監督ジェーシィとイヤミロウはサセコを部室へと連行するのだった。
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