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ないしょ話
今朝も登校すると実果と柊が教室の隅でいちゃいちゃしていた。
完全に二人の世界に入ってるな。
私は自分の席に着くと、特にすることもないので机に突っ伏した。
柊といるときの実果はちょっといつもと違う。いつもより賑やかで笑い声とかも大きくて、まるで柊の横にいていい女子は私だけなのよってみんなにアピールしてるみたい。
もう付き合っちゃえばいいのに。なんで付き合わないんだろう。
「ちょっといい?」
声をかけられて顔を上げると実果が目の前に立っていた。見ると、柊は今はグループの一人である亮太とつるんでいる。実果は私の前の席に腰掛けて、ふわっと長い髪をなびかせた。大きな瞳で私を見つめ、さっきとはうってかわって小声で話し出す。
「あのさ、柊のことなんだけどさ。ぶっちゃけ私のこと好きだと思うの。香菜もそう思うでしょ?」
「うん」
その通りだと思ったので、私はうなずいた。
「だけど全然言ってくれないんだよね。たぶん私たち二人が付き合ったら、グループの和を乱すと思ってるんだと思う。」
……そうなんだろうか。
「でもさ、そんなことないよね?私と柊が付き合ったところでうちらの絆は変わらないじゃん?香菜もそう思うでしょ?」
上手く答えられない。確かに実果と柊は両思いだと思う。でもそれで付き合ったら、私たちのグループはどうなるんだろう。本当にこのままでいられるのかな。あと、なぜか分からないけどすごくモヤモヤする。
「うん……」
と曖昧にうなずくと、実果の顔がパッと明るくなった。
「そうだよね!私あとでそう柊に言お!」
そう言うと実果は「聞いてくれてありがとー」と言って自分の席に戻っていった。
私はなんだかモヤモヤして、それをぼーっと目で追うことしかできなかった。
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