目撃

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目撃

結局一日中ぼんやりとしたまま過ごし、放課後になってしまった。掃除当番のゴミ捨てじゃんけんに負けた私は、ゴミ袋を抱えて校舎の外に運んでいた。 ふと誰も立ち入らないような校舎の陰から物音が聞こえたので、興味本位でそちらに足を向け、そして私は固まった。 ……生徒がキスしてる……。しかも男子同士で。 そのまま動けなくなった私はその男子生徒の顔を見て、さらに腰を抜かしそうになった。 柊だ……!相手はたぶんすごくモテてる一つ上の先輩。 先輩の方が先に私に気づいた。あ、と先輩が言うと柊もこちらを見て目を見開く。 数秒の沈黙の後、柊が先輩に何か耳打ちした。先輩はうなずくと、ちらちらとこちらを気にしながら反対方向へと歩いていった。柊が若干目を伏せながらこちらに向かってくる。私も顔を上げられずに俯いた。頭の中はパニックだ。 なんで。どうして。じゃあ実果は? とりあえずこの場から逃げたくてたまらなくなったが、どうにかこらえる。 先に口を開いたのは柊だった。
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