0人が本棚に入れています
本棚に追加
二人分の、
柊が立ち去っても私はその場から動けずにいた。
そっか。なんだ。実果、片思いだし、絶対に叶わない恋してるんじゃん。幼馴染のくせに何も知らないで。可哀想に。馬鹿だなぁ。
そう思うとなんだか笑えてきて、だんだん泣けてきた。
可哀想で馬鹿なのは私も同じだ。私も柊を好きだったことに今気づいた。
私はかっこいい幼馴染が欲しかったんじゃない、柊の幼馴染でいたかったんだ。実果のポジションがすごく羨ましかったんだ。私もずっと柊に触れたり、近くで見たりしたかった。
馬鹿だなぁ、私。
これ以上はありえないくらいの失恋をした後に、それに気づくなんて。
柊への想いを自覚した今、朝の実果の言葉は私を牽制するものだったのだと分かる。実果はきっと私の気持ちに気づいていたんだろう。
でもそんな牽制、意味ないのに。
私たちの想いは初めから行き場なんてなかったのに。
私と実果、二人分の失恋は重すぎて、私は地面にしゃがみこむ。
横にはまだ捨てていないゴミ袋が転がっている。
私は空を見上げた。
空は小さく切り取られていて、ぼんやりと歪んでいた。
(了)
最初のコメントを投稿しよう!