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最後のチャレンジ
「すみません…えーっと…ミヤサキさん!」
「親父でいいよ。アイツは娘の雪、二人でやってるんだ…」
「じゃあ失礼して…親父さん!!お願いです…もう一度だけチャレンジさせて下さい!!」
「構わないが…もう一箱しかないぜ。それが無くなればもう…」
「分かりました。」本当にこれが最後のチャンスのようだ。
僕は雪さんが持っていたあのラップにヒントをもらった。
ラップを引っ張りながら刃に当てるとラップは綺麗に切れていく…ラップの刃はV字でギザギザである。普通に皮を引っ張って剥くと剥けない。皮の中にある薄皮ごと身と離してやったら…
僕は玉ねぎを一つ手に取り包丁で頭を落とす。
それから垂直に二つに切り分けて…ここからだ!玉ねぎの底にV字の切り込みを入れる。
それを見ていたミヤサキは「ほう…」と呟く。
娘の雪も「父さん、あの子…」と父親の顔を見る。
そして後は手で皮を引っ張れば…皮は薄皮ごと簡単に剥けた!一箱剥き終わって丁度15分くらいだった…
親父さんの顔を見ると…
「こりゃ参った!向いてないと言ったのは俺の間違いだったようだな。お前さん、名前は何て言ったっけ…?」
「宮田です。」
「ミヤちゃんか…俺の名前と被るなぁ…下の名前は…⁉︎」
「宮田 翔です。」
「翔、お前さんが良ければ明日から店に来な。ただ、お前さんは学生さんだ。学校はちゃんと行くんだ。お前さんの空いた時間でいいよ。手伝ってもらえるかな?」
「はい。色々勉強させてもらいます。」
「厳しいぞ…覚悟しておきな!!」そう言って親父さんは笑った…
雪さんが僕に「よろしくね!父さんが一緒に仕事しようなんて…よっぽどあなたを気に入ったみたいよ。あんな顔久しぶりだわ。」
僕は感動したあの料理を自分もいつか作ることが出来るかもしれない…そう思って喜んでいたのだが、料理の世界はそんなに甘いものではなかった…
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