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結真の憂鬱
結真は鴨川のほとりで水面を見つめては溜め息をついていた。「ハァ…」
グジグジしてるのは性に合わず、何でも当たって砕けろをモットーにしている結真だったが、恋愛については奥手だった。
だからこそ夜の仕事で口説かれても相手を恋愛対象に見られずかわしていられた。
「あたし、何で好きになっちゃったのかなぁ。ずっと友達のままのほうが良かったかもしれない。」
最近、結衣と仲良く話したり、優花がぴったりくっついたりしていると自然に目で追っている自分がいる。
そして…ちょっとだけイラッとする。
かと言って…もし、翔が近くに来ようものならカーッと熱くなって、何も出来ない。
結真はかなりめんどくさい女になりつつあった。
「よし、こうなったら陽子さんに最後まで面倒見てもらおう。」
その日の夕方、陽子さんをカフェに呼び出す。
「結真…お待たせ〜で、どうしたの?」
「陽子さん…こないだのさ、アレ、どうしようかと思って…
あたしってさ、その…アレだし。どういう風にしたらいいかなって、アレのこと。」
「結真、アレじゃ分かんないわよ。うーん。
あっ!ひょっとして翔君のことかぁ…?」
「あ…ああ…そう…」
結真は耳の先まで真っ赤になった。
「わっかりやっすぅ…」陽子さんは笑った。
「もう、こっちは真剣なんだよ。」
陽子さんはニヤニヤしながら「そうだよねぇ。結真ちゃんは翔くんのこと、真剣だもんねぇ。」
「ヨ・ウ・コ・サ・ン!」
結真の怒りのオーラが陽子を襲う。
「冗談、冗談だよ。で、翔君のことで何?」
結真は今度の温泉旅行の話をした。
そこで自分はどうしたらいいか分からず、知恵を借りたいと陽子に説明した。
「うーん。どうしたらって言われてもねぇ。
それで結真は旅行で翔君とどうしたいの?
告白?キス?…それ以上?」
また結真は真っ赤になった。
「あまりロマンチックな感じではないし、私からだけどキスはした事が…」
陽子さんは驚いて「えーっ!そうなの?それじゃもうアレしかないじゃん。」
結真はアレを想像してまた真っ赤になる。
「陽子さん、アイツは結衣の彼氏だよ。それに優花にも怒られるよ。」
「でも告白して好きだと知ってもらわないと仕方ないでしょ?」
「あっ…そっち…?」
「何だと思ったのよ?」
「いや…」
陽子さんは結真の本当の気持ちを訊こうと質問した。
「結真、結衣ちゃんがあなたの立場ならどうすると思う?翔くんに全てを捧げる覚悟はあると思うわよ。優花だって同じよ。
人を好きになるっていうのは真っ直ぐにその人の腕に飛び込んで行けるかどうかよ。それをまず考えてみたら。」
結真は陽子の言葉を噛みしめた。
本当に陽子の言う通りである…
結真は翔の顔を思い浮かべる。今まで翔に優しくしてもらったことを思い出して気がつけば、結真の頬は涙で濡れていた。
「ほら結真…あなた…やっぱり…」
それを見た陽子は「これで分かったでしょ。あなた…彼のこと本気で愛しているのよ。
もし、結衣ちゃんや優花と一緒に旅行に行くのなら、旅行に行く前にきちんと自分の気持ちを彼に伝えるのもアリかもしれないわね。」
結真は旅行の前に一度翔と話がしたいと思い
翔のマンションの前まで来てしまった。
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