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もう一人のお姉ちゃん
陽子のスマホに着信が入った。
「えっ!ああ、そうなの。それは大変だったわね。お大事にね。」
一緒にいた優花が
「結真、今日、音合わせに来うへんの?」と心配そうに話す…
「なんかね、彼が…翔くんが高熱らしくて大変みたいよ。優花…あなたも…あら…?」
陽子の話が終わるのを待たずに優花は駆け出した。
「翔ちゃん、すぐにウチが行くよってに…待っててや!」
翔がまた目を覚ますと結真が側にいた。
「う…結真、部屋にいてくれたんだね。良かった。」
「あ、あたしは何処へも行かないよ。もう!」
結衣が申し訳無さそうに「ゴメンね。翔くん。」と頭を下げる。
優花さんが結衣の横から「大丈夫やったか、翔ちゃん。ウチが来たからにはもう安心やで。さあ、これを飲むんや。」
彼女はそう言って〝超ウルトラビッグバンライトニングインパクトジャスティスナイトメアまむしドリンク〟と書いてある小瓶を僕に手渡した…
「あっ。優花さんの顔見たら僕少し回復してきたみたい。優花さん、これはまた次に熱が出た時に飲みますから冷蔵庫へ…」
「そ、そうか?まあウチの存在が一番の薬やってことやな。よう分かるわ!!」
何とか事無きを得たようだ…
結真はベッドのほうの布団が汗でびっしょりだから干さないとと、横に布団を敷いてくれた。
結衣が少し元気が無さそうに見える…おや…?
布団の側に小さなラップをかけた器があった。
結衣はおかゆを作って持ってきてくれたようだ。
「結衣…ゴメン…ちょっとだけお腹が空いたんだ。おかゆもらっていいかな?」
「あ…う、うん。」
結衣は驚いて、そして嬉しそうな笑顔で僕の口におかゆを運んでくれた。
外は暗くなっていた。結衣はもう遅いから帰らせてあげないといけない…
すると結衣は意外に「私、そろそろ帰るね。お姉ちゃんも優花さんもいるし…」
優花は結衣と結真の気まずい雰囲気を感じたのか…
「じゃあウチも帰ろうかな?病人に何人も付いとってもかえって迷惑や。翔ちゃん、また来るしな。ゆっくり身体を休めてな。結真、翔ちゃんのことお願いできるか?」
「あ…ああ。大丈夫。二人とも気をつけてね。」
マンションの下で優花さんが結衣に声をかけた。「一緒にご飯でも食べて帰ろうか?」
結衣はゆっくり頷いた…
「ああ、美味しかったなぁ。」
優花が食後のコーヒーを飲みながら結衣の表情を見る。そこに結衣のいつもの元気さは無かった。
優花が静かに語り始める…
「結真の気持ち…知ってしもうたんか?」
結衣は「前からずっと気になってたことが全部今日繋がった…お姉ちゃんだからそんな訳ない。私の彼氏だから近くにいるんだって思ってた。」
「…結真もきっとそう思ってたやろ。でも自分の中でずっと気持ちを押し殺してた。妹の彼氏やし、親友の好きな男やしってな。ウチは性分やから気持ちを前に出せるけど、結真はウチらとは違う。相当辛かったと思うで…」
「優花さん、どうしたらいいのかな?私、翔くんもお姉ちゃんも優花さんも大好きだよ。」
「結衣、世の中にはな、どうにも出来ひんこともあるんや。いや、そっちの方が多いやろ。だからみんな頑張って、どうにかなったらええなぁって頑張るんや。結衣は翔ちゃんを結真に譲って諦めるか?」
結衣は目を伏せて頭を横に振った。
「結衣も結真もウチも翔ちゃんが好きなんやったら一生懸命頑張ったらええんと違うか?翔ちゃんが誰を選ぼうと結衣も結真もウチは大好きや。まあ最後に翔ちゃんを貰うんはウチやけどな。」
結衣は少し微笑んで「負けません。」と笑う。
優花も「ちょっと塩を送りすぎたわ!返してな。」そう言って笑った…
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