第一章・―遭遇―

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 自販機の明かりに照らされた男の顔は、それなりに男前で、思わず横顔に見入ってしまう。  少し手入れした跡も見える無精髭が、男が持つ不安定さ、独特の雰囲気と妙にマッチしている。  ――正体不明。そう判断した方が、正しいのかも知れない。 「会社で昇進出来ましてね、今日は嬉しさのあまり、しこたま飲みましたよ。勿論、僕の奢りで」  酔った勢いでの受かれ具合とは、自分でも恐ろしいもので、男から聞かれてもいないのに、ぺらぺらと今日あった出来事を話してしまう。  誰か、同僚や先輩、後輩ではない、誰かに自慢したかったのかも知れない。  自分でも何を言ってるんだと思いつつも、話さずにはいられなかったのだ。 「そりゃあ良い。……良かったじゃあないか」  あまり男の興味をそそらないかと思ったが、意外と俺の話を楽しんでくれているらしい。  楽しげに答えてくれると、煙草の封を開け、一本取り出して口に咥えている。  それから煙草に火を点けると、紫煙を吐き出して続けた。
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