5人が本棚に入れています
本棚に追加
自販機の明かりに照らされた男の顔は、それなりに男前で、思わず横顔に見入ってしまう。
少し手入れした跡も見える無精髭が、男が持つ不安定さ、独特の雰囲気と妙にマッチしている。
――正体不明。そう判断した方が、正しいのかも知れない。
「会社で昇進出来ましてね、今日は嬉しさのあまり、しこたま飲みましたよ。勿論、僕の奢りで」
酔った勢いでの受かれ具合とは、自分でも恐ろしいもので、男から聞かれてもいないのに、ぺらぺらと今日あった出来事を話してしまう。
誰か、同僚や先輩、後輩ではない、誰かに自慢したかったのかも知れない。
自分でも何を言ってるんだと思いつつも、話さずにはいられなかったのだ。
「そりゃあ良い。……良かったじゃあないか」
あまり男の興味をそそらないかと思ったが、意外と俺の話を楽しんでくれているらしい。
楽しげに答えてくれると、煙草の封を開け、一本取り出して口に咥えている。
それから煙草に火を点けると、紫煙を吐き出して続けた。
最初のコメントを投稿しよう!