第一章・―遭遇―

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「確かにそれは、飲みたくなる出来事だ」  身なりからして会社勤めでもなさそうだと思っていたのに、昇進する事の嬉しさを理解してもらえたらしく、益々調子に乗ってしまう。 「でしょう! 本当に僕も、嬉しかったですよ!」  満面の笑みで頷くと、俺も煙草を一本取り出して火を点ける。  自販機の明かりだけが頼りの、深夜に至る公園の入り口に、煙草の頼りない火が二つだけ灯る。  そこで初めて、不自然な事に気付いた。  いつもならば公園には、明るいくらいの街灯が点いているのに、今夜に限ってだけは、何故か全てが命を失ったように消えて、本当に自販機の灯りしかない状態なのだ。  そんな公園内から、夏の終わりを告げるような、妙に生温い風が吹き抜けていき、埃から庇うようにして目を瞑った。  そこで不意に、男が地の底から響くような、低い声を放つ。 「今夜みたいな日に、野暮な事はしないでおこう」  低い、が、良く通る声だった。 「……え?」  驚いて瞳をあけると、男は相変わらずニヒルに笑っていた。  俺を見詰めて肩をすくめると、少し困ったように続けるのだ。
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