二十四日・深夜

1/1
前へ
/10ページ
次へ

二十四日・深夜

 コルチカム。  葉が枯れてから咲くことを知らずにいたわたしは、売り物にならないと判断して廃棄してしまったのだ。研修が終わるか終わらないかという頃だったせいか、椎名さんは「話しかけづらくしたあたしが悪い」と言ってくれたけれど、本当に悪いのは、ちゃんと確認しなかったわたしだ。  自己完結せずに意思疎通をしなければならないと、あのとき確かにそう思ったはずなのに、わたしはまた同じ過ちを繰り返してしまった。  眠れずにいる夜はいつも、後悔や自己嫌悪の思いが膨れ上がって苦しくなる。  のしかかる暗闇や静寂から逃れるようにわたしは身を捩った。  閉じた瞼の裏で、コルチカムが透明感のある花弁を揺らす。  そうだ、コルチカムを咲かせよう。  唐突に思いついて目を開ける。一度は開花させることなく捨ててしまったあの花を咲かせることができれば、この苦しみも少しは薄れてくれるかもしれない。  そして次にあの人と会ったとき、そのときこそ、ちゃんと訊きたい。  決意を胸に、わたしは今度こそ目を閉じた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加