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悠弦高校映画研究部の部室に向っていた影山亮介は、前を歩く女子の後姿に気付いて歩調を少し落とした。友人であろう別の女子と楽しげに喋っているその女子の名前は、室端泉希と言った。
制服の裾から伸びる綺麗に日焼けした腕や足が実に健康的で美しかった。友人の方を見ていた横顔の、眼だけが不意に背後の方へと動いた。ほんの一瞬だったが、亮介は彼女の視線が自分の視線と交錯したのを感じた。どきりと胸が高鳴ったその時、突然ポンと肩を叩かれた。
思わず声を上げそうになるほど驚いたものの、寸でのところでそれを抑え込み振り返る。
「よっ」
いたずら小僧の様な笑みを浮かべて立っていたのは、同じ映画研究部の加賀谷博人だった。
「お、おう……」
「なんかぼーっとしてたな」
そう言いながら、前を歩く女子二人に意味ありげな視線を送る。
「ち、違うって……。ほら、部室行くんだろ?」
行こうぜ、と促す亮介を博人は手で制した。
「今日、委員会だからさ、部の方に顔出すの遅くなる。ていうか、行かないかも」
「ああ、分かった。どうせ、大して出席率の言い部じゃないし」
「確かに。けど、一応休むときには誰かに連絡するのが決まりだからな」
「分かった。律儀だな」
「まあ、そう言う事で良いさ」
博人はポン、と亮介の肩をもう一つ叩いて、そのまま校舎の方へと戻っていった。その背中を見届けた後で亮介が振り返ると、二人の女子はもういなかった。
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