20人が本棚に入れています
本棚に追加
「――藍堂さん、またお花、届いてますよ〜」
その翌日、まだスイセンが生き生きと花を咲かせているというのに、またしても看護婦さんが花束を持ってきてくれる。
彼女の話では、やはり会社の者が受付に来て、その花だけを置いて行ったらしい……なんだろう? 昨日来たやつらとはまた別の同僚達か?
今度の花は昨日と打って変わり、少々小ぶりな濃い青色の花弁で、真ん中の部分だけが白くなっている花である。
「だから、こういうのは逆に迷惑だって言ってあるのに……なんて花だ?」
これはあまり見たことのないもので、花に疎い私にはなんだかわからない。
「さあ? わたしもそんな詳しい訳じゃないので……」
看護婦さんに訊いても、今回はスイセンのように蘊蓄はおろか、名前すら出てこなかった。
同室の患者達にもそこまで花に詳しい者はおらず、一応、訊いてみたがやはりわからない。
が、偶然、他の患者を診に来た女医さんが趣味でそちら方面に詳しかったらしく……
「ああ、それはアンチューサね。和名はウシノシタクサ。葉っぱをポプリなんかに使うのよ。わたしも一度作ったことあるわ」
………と、教えてくれた。
なるほど……確かにこれもなにやら香りが強い。
「それじゃ、スイセンと一緒に生けておきますね」
まあ、匂いは強いが見た目は可愛らしく、見ていて悪い気はしない花である。一応、断りを入れる看護婦さんにその花も生けてもらって、私のベッドの脇は香りともどもさらに華やかになった。
最初のコメントを投稿しよう!