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ところが、その翌日も……。
「藍堂さ〜ん。また、お花来てますよ〜。ずいぶんと人気者なんですね〜」
予想外なことに、またしても看護婦さんが受付に届けられた花束を持って来たのだ。
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら彼女が手渡したものは、一昨日、昨日とはまた違って、真っ赤な大輪のインパクトある花である。
「これはわたしにもわかりますよ〜。アネモネですね〜」
アネモネ……私も名前くらいは知っている。そう言われると、確かにこんな花だったような気もする……。
いや、それにしても三日連続で花が届くとは……そんなに私は人気者だっただろうか?
同僚みんなでお金を出し合って贈ってくれたものと思っていたが、そういうわけでもないのか?
もしや、個人々〃で贈ってくれていて、一昨日の最初の一人の話を耳にした他の者が、昨日、今日もそれを真似て贈ってくれたんだとか……。
「もう、ほんと迷惑だし、後のお返しも考えなきゃいけないから、こういうのは困るんだけどなあ……」
会社に電話をしてやろかとも思ったが、逆に薮蛇になりそうな気もするし、そういう他人に気を遣うストレスは今の私にはよくない。
「もう、そんなこと言って。ほんとはすごくうれしいんじゃないんですかあ〜……あ、これも一緒に生けときますね」
最近ではだいぶ親しくなった看護婦さんが悪態を吐くわたしをそう言ってからかいながら、今日のアネモネも窓辺の花瓶の花と一緒にしてくれる。
ま、確かにおっしゃられる通り、三日連続で花をもらって、うれしくないといえば嘘になる。
「まあ、一応、感謝はしてますけどね……」
私は照れ隠しにぶっきらぼうな言い方で呟きながら、白、青に続いて赤も加わり、ますます豪華になった窓辺の景色をしばしの間見やった――。
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