ハウスマヌカン

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 私はハウスマヌカン。  ブティックの販売店員よ。  今や使われなくなっちゃったけど私はこの言葉が好き。  だってハウスって英語でしょ、マヌカンはフランス語でしょ、この二つをコラボさせた造語だなんてとってもオシャレじゃない。  何で反故になって捨てられる紙みたいに消えちゃったのかしら。  分からない。  そんなことはどうでもいいの。  何たって今日もいらしたいらした。  上得意様が。  嗚呼、なんて素敵な方。  私がこの方を憧れの人として選んだ理由は第一に影があるってこと。  中々いないわよ、そういう人って。  今時さ、なんか、矢鱈にへらへらしてて軽いのとか、男ってバカだの鈍いだの子供だのと自分を卑下しておいて女性は細やかだの勘が鋭いだの大人だのと女を持ち上げて女に媚びるプライドのないのとか、綺麗事が持て囃される世の中に合わせてお為ごかしに誰それの為にと調子の良いことを言うのとか、トレンドに流されっぱなしのポリシーのないのとか、空気を読んで周囲に同調する自分がないのとか、そういう俗物根性丸出しのスノッブは腐るほどいるけどね。  だけど、あの方は違うわ。  砂の中の黄金ね。  だからいつか私を誘ってくださる。  見る目があるに決まってるもん。
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