1、ボクがボクである理由・前編

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1、ボクがボクである理由・前編

ボクは、自分のことを『ボク』と呼ぶ。 何故なのか、よく聞かれる。 ボクの家族には、父さんがいないからだ。 ボクは、父さんの分まで強くなりたかったんだ。大切な人を守れるような強さが欲しかったんだ。 弟もボクも、父さんの顔を知らない。母さんも、父さんのことを話そうとはしない。 ……1度、聞いてみたことがある。 あれは5歳の頃だったろうか。 ボクの家は、こじんまりとした一軒家だ。ドアから入ってすぐ右にあるリビングで、母さんに尋ねた。 「どうしてみんなにはお父さんがいて、私たちにはいないの?どこに行ってしまったの?」 そう聞くと、母さんの表情が曇る。 今考えると、触れてはいけない話題だったのだろう。そんな事も分からなかった当時のボク。しばらくしつこく聞き続けたのだ。すると、遂に母さんは泣き出してしまった。 流石のボクもはっとして、それ以来聞くことはなくなった。 聞かなかったとて、興味がない訳ではない。 あの日焼け落ちた家の残骸の中に、ボクは1冊の日記を見つけた。
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