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第十二話 一年生チーム同士
皇帝メンバーはベンチ前に集合した。メンバー全員が、正面に立つ太刀川の顔を見つめていた。
「今日は監督の代わりに、オレが指示を出す。一年生でも夏までに戦力になりそうな奴はすぐ推薦してやるからガチでやれよ」
太刀川のゲキに全員が大声で返事をした。
そしてスタメンが発表された。東雲は三番ピッチャー、神崎は四番ライト、若林は六番キャッチャーに選ばれた。
――その一方で、明来もスタメンを発表した。
一番センター兵藤
二番ショート山神
三番キャッチャー不破
四番サード氷室
五番ピッチャー千河
六番ファースト青山
七番セカンド風見
八番レフト大田
九番ライト松本
底其処戦と同じオーダーだ。しばらくはこの布陣がメインなのかもしれない。
整列が終わり、皇帝ナインが守備についた。明来注目の東雲はマウンドで投球練習をしている。右腕から投げられたボールは、軽めに投げているように見えるが、キャッチャーミットの音が高く響き渡る。いいボールを投げている何よりの証拠だった。
一番の兵藤が左打席に入り、主審のプレイボールがかかる。
プレイボールの声とともに、東雲は投球フォームに入った。
スパーン！
「ストライク！」
初球を見逃した兵藤は、ベンチに球種を伝えている。あのジェスチャーはスライダーだ。
その後ストレートを見逃し、ワンボール。次のチェンジアップを空振り、ワンボールツーストライク。そしてボールを受け取るや否や、東雲が一段とテンポよく投球フォームに入ってきた。
ギィン！
――鈍い音がした。ストレートを打つも、どん詰まりのサードゴロ。だが兵藤は俊足、面白いかもしれない。兵藤は全速力で一塁に走り出した。
だが、東雲が物凄いスピードで打球に向かってきた。素手でボールを捕り、ファーストへ送球した。際どいタイミングだが判定はアウトになった。
兵藤はじっと東雲を見つめながら、ネクストバッターサークルまで小走りで向かった。
「ストレートも速いが、あのチェンジアップは手元で止まる。厄介な組み合わせだ」
兵藤はネクストバッターサークルに入った不破に、冷静に東雲の情報を流した。
「そうか。初球見た球はスライダー？」
「そうだ。スライダーはカウント球っぽいな。打つならアレだと思う」
伝達を終えてから兵藤はベンチに戻り、他のメンバーにも東雲の情報を伝えていた。全員がその話を真剣な表情で聞いている様子だ。
――その時だった。
パキィン！
金属音と共に、打球はセンター前に転がった。
カウント球のスライダーだろうか、山神がヒットを打って出塁した。
明来ベンチは驚いている様子だ。無理もない。なぜなら山神はゴールデンウィーク期間、今日を除いて一度も練習に来ていなかったのだ。
ただ早速ランナーが出た。
明来ナインは東雲のセットポジションからの投球に注目した。ピッチャーによってはランナーが出てからコントロールや球威が落ちることがある。
しかし東雲はランナーへの警戒心も残しながら、テンポよくキレのいいボールを投げ続けている。
スパーン！
「ストライク、ツー！」
東雲ペースにカウントが進み、三番の不破はツーストライクに追い込まれてしまった。
何とかしたい気持ちの表れか、彼はバットをかなり短く持っていた。
カィンッ！
ストレートになんとかバットを当てた、打球は力なくセカンドに転がっている。
「ファースト！」
皇帝キャッチャー若林の指示が響き渡る。
山神のスタートが良かった為、二塁フォースアウトを諦めさせたのだ。
明来としては進塁打となり、ツーアウトながら俊足の山神を二塁に進めることができた。早速得点のチャンスが訪れた。
「頼む、氷室」
そう呟きながら、不破はベンチに戻っていった。不破のベンチには、おそらく白川と風見が用意してくれたであろうドリンクと、防具が一式置いてあった。彼はドリンクを一気に飲み干し、守備の準備に取り掛かった。
不破はグラウンドに目線を移した。丁度、氷室が打ったところだった。――惜しい、打球はセンターのグラブに打球は収まった。
「きつい試合になりそうだな」
不破は呟き、キャッチャーの位置まで走っていった。
一回表終了
明来 ゼロ対ゼロ 皇帝
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