第二百三十九話 油断なき首脳陣な件

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第二百三十九話 油断なき首脳陣な件

「ストライク、バッターアウト!!」 「ヨシッ!!」  守は小さくガッツポーズをしながら、駆け足でベンチへ戻っていた。百二十八キロのストレートで、七番打者を打ち取った。六番打者から連続の見逃し三振に切ってみせた。 「ナイスボール、千河」  不破がすぐさま守を労った。守はそれにグラブタッチで応えた。  ――その一方、永愛ベンチ。 「すみません、監督」  打ち取られた七番打者が悔しそうに、見逃し三振を謝罪した。 「顔を上げてください。耐球指示を出しているのは私です。フルカウントから、あんな素晴らしいコースに投げられたらお手上げです」  安藤監督は彼の肩を優しく叩いた。 「監督」  マネージャーの知世が安藤監督に話しかけた。 「千河さ……君が急にシフトチェンジしましたね。愛亭君の打席あたりからストレートで押す投球スタイルになっている様に思います」 「えぇ。今日はストレートが格段に良いですからね。この短期間でここまで成長するとは、天晴れです」  安藤監督は感心したかの様に大きく頷いていた。 「ただやはり、今までの試合と比べてストレートのコントロールは落ちています。球速重視の代償ですね」  知世がスコアシートを安藤監督へ見せた。 「基本的にはコースにまとまっていますが、まだ一部アバウトなコースもあります。うちのバッター陣がそれを捉えきれていないですが……」    ――キィィン!!  知世たちが話している中、バット音が聞こえた。先頭打者、青山の打球は浅いセンターフライとなった。この回からまたセンターに戻った雲空がしっかりとキャッチした。 「九番ピッチャー、千河君」   「ただ改めて感心します。一番成長する時期の男子高校生たちに混じって、試合に出て活躍しているんですから」  知世は打席に立つ千河を見て、監督にだけ聞こえる声で話していた。安藤監督も同調する様に頷いている。 「だからこそ誠意を持って、彼女を攻略するまでです」  安藤監督の言葉の直後、鈍いバット音が響き渡った。平凡なセカンドフライとなった。 「さぁ、一番の兵藤君です。彼の足は完全に封じます」  永愛守備陣は、初回と同様の、超前進守備体制を敷いた。  ――キィィン!!  兵藤の打球はピッチャー前のどん詰まりのゴロとなった。碧海が素早く打球を処理した。 「アウト!!」 「三.九九、三.七二!」  知世はまたストップウォッチでタイムを伝えた。ピッチャーゴロということもあり、かなり余裕のあるタイムだった。  三者凡退で抑えた永愛守備陣は、駆け足でベンチへと戻ってきた。  三回表 終了  明来 ゼロ対一 永愛
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