ちっぽけな世界

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 仕方がないので俺は本当に自分が意図的に主席を外されたのかどうか、調べることにした。別に主席なんてどうでもよかったが、試験の点数だけは聞いておきたかった。自己採点では全教科で2問しか間違えていないからだ。  担任、学年主任、教頭、誰に聞いても言葉を濁すだけで、正確に答えてくれない。校長に聞くようなことを言うと、今日は席を外していると言うのだ。  何かあると思った。校長室をノックすると、人の気配を感じたが、一向に出てこなかった。居留守だろうか。  別に今更主席なんてどうだっていい。ただ本当のことが知りたいだけなのに、一体何だっていうんだ。  今度はPTA会長の息子という奴から当たることにする。そいつはすぐに見つかった。自分のクラス、2組の学級委員に聞いたのだ。主席なのに知らないのかと言われ、やはりそいつだとわかった。1組の有田正平(ありたしょうへい)という男。  1年1組のクラスに行き、適当な女子を捕まえ、有田というやつがどいつか聞いてみた。見ると、眼鏡をかけて陰気そうな男だった。入学式で見たのは確かにこんなやつだった気がする。  女子がわざわざ俺の前に有田を連れてきたので、俺は仕方なく挨拶する。 「俺は幾原良和。よろしく」  と言ったら、有田という奴の顔色が変わった。 「な、何の用?」 「いや、別に。主席ってどんな奴かなと思って」  明らかに動揺した顔。やっぱり知っているのかと思った。 「きききき、君は」  しどろもどろな様子に、たたみかけるように質問をする。 「なあ、あんた試験の点数何点だった?」 「な、何の話だ」 「だから、点数がいくつだったかって聞いてるんだよ。俺は490はいってると思ったんだけどな」  そう言ったら有田はかろうじて「495」と口にした。 「へえ。じゃあ、あんたの方が上だな。よかった」  これはただのはったりで、実際の点数はもっといっていたはずだ。それに、今有田が言った点数は、その場の思い付きで口にしただけかもしれない。しかしそれ以上は証拠がない。  俺はそれ以上言及するのはやめた。別に今更主席を返してほしいわけでもない。ただ、そういう不正があったという事実が知れればいいのだ。  はっきりとはわからないが、有田の態度を見る限りでは、かなり怪しい。
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