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走って、走って、走って。
息を切らしても走り続ける。
走りながら思う、クイナのことを。
何故僕は彼女を選んだのだろう。
何故僕はこれほどまでに彼女を思うのだろう
そして、思い出す。
昔、彼女と交際していたんだ。
一緒に街を歩いていた
結婚式の打ち合わせをして
結婚指輪も準備していた。
しかし、その後の記憶が曖昧なのだ。
意識を失い、あのガラス張りの部屋にいた。
だから僕は彼女を選んだのだ。
やっと分かった。
彼女を助けなければ!
クイナの家が見える
クイナが庭から僕を呼んでいる。
「ジョン、帰ってきたのね。」
彼女の目には涙が浮かんでいる。
「クイナ、クイナ!」
彼女の名前を呼び、車道を横断する。
横から衝撃がくる。
僕の矮小な体躯は吹き飛ばされ、
目の前だった彼女の姿も遠く見えない。
アスファルトを流れる血を見て思い出す。
そうだ、あのときもトラックに轢かれて…
彼女が僕の名前を呼び、駆けてくる。
それでも僕の意識は遠のいて
遠く、遠く、遠く。
彼女を…守れなかった。
その後悔だけがアスファルトの血のように
溜まって流れて、僕は消える。
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