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僕は列で待つというのは苦手だ。
時折、横入りされる事がある。
僕の並び方にも問題があるのかもしれない。
またちゃんと並んでいてもそれを無視してオーダーを通す人もいる。
そういう人間に対し文句を言えないし、店員に文句を言えるわけも無くストレスだけが溜まる。
こんな僕だから横入りされるのだろうか?
主張した方がいいのだろうか?
でも、主張して気まずくなるのも嫌だし、何かを言われるのがもっと怖い。
本当は店員の方からちゃんとしてほしいのだが、一度ちゃんと並んでいるのに気付かずに後から来た客に声を掛けられた。
後から来た客にも指摘できず、店員に文句の言えない僕はその時はどうにも我慢できずにその場を去った。
そんな店を利用したくは無かったのだ。
ちゃんと客を見ていない店員。
ある種、後から来たお客に罪は無い。
僕が声を掛けるべきだったのだ。
しかしできなかった。
それに以前にも店員の接客については不満があった。
だから店を出た後もう二度と行くもんかと心の中で憤慨した。
だけどやっぱりこんな僕でもそれだけでは納得できなくて「苦情でも言ってやろうか考えている」と友人の晴耕に愚痴をこぼしたところ、晴耕はスマホを取り出しにやにやして操作し出した。
嫌な予感がしたので僕は恐る恐る聞いてみた。
「何してるの?」
「ん?気弱な一郎君の代弁さ」
「代弁って!?」
僕は即座に恐ろしくなった。
キングオブクレーマーと呼ばれる晴耕が代弁って!
何を書くつもりだこいつは。
慌てた僕は晴耕の操作の手を止めようとしたが、晴耕はうまくかわしてスマホを操作し続ける。
ちらりと見えたがかなりひどい言葉遣いだ。
「いいって!」
「俺はよかない」
いやいや君は関係ないだろ本当は。
何とか操作を中断させようとするがすばしっこく逃げ回る晴耕。
そういえば晴耕は程々運動神経はいい方だ。
それに比べて僕は・・・。
いやそんな気弱に考えてはいけない。
あと少しでこの男はメール作成を終えて送信する。
何としても阻止しなければ!
ここは一つ後ろ向きな手だが諦めたと見せかけて。
あれ、反応がない。
おい!全然手を止めないぞコイツ。
やばい!
力ずくでと思い手を押えたが晴耕はにっこりわらってスマホの画面を見せる。
画面にはご意見ありがとうございましたと表示されていた。
勘弁してくれ。
半べそをかきながら崩れ落ちる僕に晴耕は言った。
「あのさ、行っててストレスたまる時点で行かねー方がいいって。飯買ってんのか、ストレス買ってんのかわかんねぇって」
図星。なおも晴耕はつづけた。
「それよりもさ、満足できる、納得できる店を捜せって。自分が気兼ねなく、利用しやすい店をさ。店員もしっかりしてるような。そうすりゃこんなバカみたいな事考えなくてもよくなるんだぜ。そうお前のベストプレイスをさ」
返す言葉が無かった。
確かに近所では利用しやすい店しか行ってないし落ち着くよな。
それがベストプレイスというものかもしれない。
だが、僕は一つだけ気になった質問をした。
「何を送ったの?」
「内緒♪」
この回答のお陰で僕はその晩不眠症になった。
そして晴耕が苦情を送ったお店には怖くて二度と行ってない。
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