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嶺視点
涼の形見のピアスを大切そうに抱きしめ、あまり変わらない表情を最大限歪ませて涙を流すルーを見ながら前に涼が言っていたことを思い出した。
[ルーとさ、いつか旅したいなぁ。あ、アルカディア国とか良いかも。あいつ意外とファンタジー好きなんだよ。あーんな澄ました顔してるけど。
…なぁ、嶺。もし、もしもだぞ、オレがいなくなった時にルーが旅するって言いだしたらこれを渡してくれ。ルーの事だからオレに何もしてあげれなかったとか自分のせいだとか言うんだろうけど、絶対にあいつはくたばらないよ。そんなルーの支えになりたいからもしもの時を考えて渡しとくわ。あいつはオレや過去に囚われることはないだろうけどオレはルーに死んでもとらわれ続けたいからね。」
確かに、涼の予言通り涼はいなくなり、それでもルーはくたばらなかったし、ルーは旅に出た。
だか、涼、ひとつだけまちがってるよ。
ルーは確かに過去に囚われてない。でもルーは、おまえには囚われてるよ。
運命の相手を選ばないほどに。
医者をしているからよく知っている。
運命の素晴らしさと残酷さを。
それにしても、ルーの最後の別れの言葉にはびっくりした。
ルーには秘密だけど俺の故郷はアルカディア国。
ルーが最後に言っていたことなんて簡単にわかってしまう。
「{クレハ、嶺、救ってくれてありがとう。}」
いつも、ルーに生きろとか言ってきたけど、その言葉が本当に正しかったのか不安だった。
俺にしてみれば、クレハを失って生きろって言われるようなもの。
絶対に無理だ。
でも、ルーの言葉で今までの俺たちの行動に意味があったことを知った。
ルー、どうか元気で。
そして、できることならもう一度しあわせになって欲しい。
きっと、あいつもそう望んでいるはずだから…
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