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主人公視点
教会はとても大きくて白いステンドガラスが美しい建物だった。
「ようこそいらっしゃいました。神への祈りを捧げ、日々に感謝致しましょう。そうすることで神々は仔羊達の個性に合わせ恩恵を授けてくださるのです。どうぞこちらへ…」
連れられてついたのは大きな十字架が掲げてある礼拝堂だった。
前の方の床には魔法陣が描かれており、神聖な空気が漂っていた。
「神はあなた様の送ってきた人生をご存知です。なので何を隠すことなくこれからの人生どう生きたいかをどう生きるのかを心で誓ってください。さすれば神の恩恵が与えられるでしょう。」
ゆっくりと魔法陣まで歩く。
…正直、神様なんて信じていない。
ただ魔法とか、スキルだとかがあるこの国では確かに信じざるをえないのだと思う。
魔法陣の真ん中で跪き、目を閉じる。そして胸の前で手を組みこうべを垂れる。
それでも、神様を信じるとこが出来ないから、涼。
僕はあなたに誓う。
(どんなことがあろうと、自分の進むべき道は自分で決めます。今まで自分には鎖が巻きついて離れないんです。でも貴方が救ってくれた。貴方とはもう会えないけれど貴方が残してくれたかけがえのない思い出を大切にします。あと、偽善でも自己満でもいい。僕も誰かを救えるといいな。
運命の印番と出会いました。まだよく知らない人です。それもそうだよね、逃げてきたんだから。…貴方は許してくれますか?僕が他の人を愛することを。)
魔法陣から風が吹いていく。
➖キミは何を望む?君を縛り付ける奴らをねじ伏せる力?それとも弱者を救うための癒しの力?➖
女とも、男とも取れる美しい声が脳裏に響く。
(壊したいんじゃない。聖人君子になりたいわけでもない。あえて言うとしたら…もう何も失いたくない。涼との思い出も他を愛してしまったら失ってしまいそうで怖い。だから自分と自分の大切な物を守れる力が欲しい。)
➖そっか。キミはひどく臆病だね。それでいて強情だ。まぁ、いいよ。運命に背こうとする人間なんて久しぶりだからね。ちょっとサービスしてあげる。だから、頑張って足掻いてよ。➖
笑いを含んだ声を最後に風が体を包み左の手の甲に抉られるような痛みが走った。
風が徐々に収まり、左手の甲には青い魔法陣が浮かび上がっていた。
「だ、だいじょうぶですか!こんな事今まで一度も…も、もしかして…」
魔法陣が浮かんだ手をそっと隠しながら、慌てるシスターに一礼して教会を後にした。
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